第2306話 70枚目:本体攻撃

 結局、流石にいきなり本体を燃やすのはどうなるか分からないから怖い、との事で、まずは切り離されて実験室に送り込まれた分を燃やしてみる事になった。まぁそうだな。種をばら撒かれたら後が大変だから。

 なので私が灯りの奇跡を願い、ルドルに全力のバフをかけた上でその後ろに隠れ、灯りの炎を移した松明を投げつけてみたところ……まぁ分かってたけど盛大に燃えるよね。

 で、クリティカルポイントで即死させた時に種をばら撒かれたし、大ダメージを与えると種を使って攻撃してきたから、絶対大ダメージかつ死ぬまで消えない炎で燃やすと何かある、と思って警戒していたんだが。


「……。何も起こりませんね?」

『こちらでも種の生成は観測できない。……いや待て、生成自体はしているようだ。生成された直後に燃やされているのか、これは……』

『まぁ始祖だからな』

『次への害となる物を残す訳がないよね』


 実に平和的に、というと若干の語弊があるかも知れないが、いつも通り安心安全な感じで消し炭も残らず燃え尽きた。お、この炎でも焦げ跡1つないとは、流石実験室。

 まぁでも、燃やしたところで問題ないっていうのが分かった訳だ。「第二候補」もそろそろ飽きてきたゲフン安全に決着がつくならそっちの方がいいのは分かってくれているので、ベルンツさん達研究所の人達さえ良ければ問題はない状態だし。


『なるほど……それなら、奇跡の炎に頼った方がいい、だろう。そのタイミングに合わせてこちらで空間を操作すれば、残っている分も全部炎が伝って燃やし尽くせるかも知れないな』


 で、無事納得してくれたので、本体は燃やすことになった。……隔離した一部だから結局レイドボスの名前は分かって無いんだが、まぁ仕方ないな。周りに被害の出ない特殊空間に居座る植物、っていう、燃やしてくださいと言わんばかりの条件を揃えた方が悪い。

 という訳で通路を開いてもらって突入。……したはいいんだが、私が灯りの炎を旗槍の先に掲げて一歩踏み込んだ瞬間、通路自体が燃えたんだよな。もちろん慌てて実験室に撤退したんだが……。


「え? もしかしてあの本体、通路に踏み込んだ私へちょっかい出そうとしたんですか?」

『そうじゃろうのう。まさしく飛んで火に入る夏の虫じゃ』

『あ、あぁ、そのようだ。あっという間にシステムで作った空間に炎が広がって……いや、自ら端を切り離しているな。実験室に送り込むが、問題ないか?』

『まだもうちょっと続くんだな』

『片付けは大事じゃない? ボクの方は大丈夫だよ』


 いやそりゃ燃えるだろうよ、としか。まぁ防ぐ方法が無いなら、炎の元を何とかするしかないだろうが……だからって、わざわざ炎の元に手を出さなくても。あれだけ燃やされていて学習しなかったんだろうか。されても困るけど。

 ベルンツさん達は観測で忙しそうだが、それでもやる事はやってくれている。そしてレイドボスはなかなかに諦めが悪いようだ。……とはいえ、私がいる以上は燃やせば終わるのが分かってるからな。


「私の方も問題ないですよ。まだ奇跡は継続してますからね」

『あ、私の方も奇跡を願ったら灯りをつけられました!』

『ねぇ。今新しく送り込まれてきたやつに火が点いていたのだけど。松明に移したら普通に燃えてるわよ?』

『とても盛大に燃えているようですね』


 ここしばらく、奇跡の炎で燃やせない相手が続いてたからな。そこに、害しかない植物型のモンスター(レイドボス)、しかも隔離された特殊空間に引っ込んでるっていう、全力で燃やしても問題ない相手が来たから、ティフォン様も張り切っているのかもしれない。

 というか、力強く親指を立てているティフォン様が想像余裕だ。ありがとうイケオジ。頼りになるなぁ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る