第2305話 70枚目:本体発見

 何というか……「第二候補」が自主的について来ただけはある、って感じだろうか……。

 と、流石に私も疲れてきた現在は、レイドボス(の一部)との戦闘が始まって5時間ぐらい経過した辺りだ。その間、ずーっと戦いっぱなしだったからな。実験室で。

 いくら相手が分かっているし、その注意事項や奥の手まで分かっているとはいえ、油断すると痛いには違いない。しかも1体1体がそこそこしぶとい上に、あまり一気に削り過ぎると厄介な奥の手を使って来るから、じわじわ戦わなければいけない。


「……ダメ?」

「ダメなんですよ、ルシル。一発で仕留められる場所を見つけたのはすごいんですが、それをやったら周り中に種をばら撒かれて大変な事になったでしょう?」


 なおそんな事もあったが、流石実験室というべきか、部屋そのものは大丈夫だった。ただ大量に飛んできた種の大半を、ルドルが反射系のアビリティで弾いてくれなければもっと大変な事になっていただろう。

 ちなみにルシルが見切って実際即死が発生するクリティカルポイントだったのは、蔦の奥で球根のように丸くなっている部分だった。そしてそれを確認した事で、ベルンツさん達による本体の場所の捜索が捗っているようだ。

 ただ捜索が捗るとその分だけレイドボス側の抵抗も激しくなるらしく、戦闘ペースは上がる一方である。うん。「第二候補」がとても楽しそうだよ。そこそこ手応えのある敵が、倒せば倒す程お代わりされるんだから。


『全体連絡だ。恐らく本体があるだろう区画を見つけた。ただその周囲にもしっかり範囲を広げている上に切り離しが難しいから、実験室1つに入る大きさにするのは無理だ』

『ふむ。つまりそこへは乗り込むしかないという事じゃの?』

「まぁそういう事ですよね。もちろん周囲を削った上で、退路を含めて囲まれないようにこちらでの迎撃は続けないといけないでしょうし」

『そう言う事ではあるんだが、本当に話が早いな……』


 さて、と息を吐きつつそれでも次のレイドボス(の一部)と戦い始めたところで、ベルンツさんからそんな連絡があった。そこへまず反応したのは「第二候補」だが、私の応答も間違っていないだろう。実際、ベルンツさんがちょっと慄いた感じの声を出していたから。

 そのままベルンツさんは、通路を作るのは出来るがそれは一ヵ所にしか繋げられない事、他の場所はその直通通路を守る為に次々レイドボス(の一部)が送り込まれる事になる事を説明した。つまり、倒すのに手間取ったら2体以上になるって事だな。

 となると、本体に挑むのはどの実験室にいるチームがいいか、となる訳だが。


『ところで「第二候補」。本体と直接戦いたいですか?』

『ふむ? 譲ってもらえるなら征きたいところじゃが、他にも手がありそうじゃな?』

『えぇまぁ。だって、本体が見えて、確実に辿り着けるんでしょう? ――燃やした方が早くありません?』


 まぁ直接本体と戦うのであれば、色々な意味で「第二候補」だろうな、というのはともかく。本体が見えてるなら、ティフォン様の奇跡による炎で一掃してしまってもいいと思うんだ。


『……お嬢……』

『だから姫さんさぁ……』

『そもそも、最初の取っ掛かりとなる穴だってそうだったじゃないですか。つまり、今回の相手は燃やせます』

『それもそうですね。もちろんその場合も、恐らくは大火力という事で出現するだろう大量の種に注意しなければなりませんが……かの神による炎であれば、種ごと燃えるかと』

『正直、残党掃討とかの事を考えても、そちらの方が確かなのは間違いないわよね』

『変に切れ端が残って後で悪さをする、って事もなくなるでしょうし、その後が一番安心ではありますね』

『まぁそれはそうじゃの。問題は、それほどの威力で焼いて、本来のものは大丈夫かという事じゃが』


 そしてエルルとサーニャは難色を示したが、召喚者プレイヤー組はおおむね賛成って時点で有効なのは間違いない。それに本来のもの、ベルンツさん達が作った空間的な防御システムだが、それも恐らく大丈夫だ。何せ最初に焼いた時、ちゃんとシステム部分は残ったからね。


『ま、待て、待ってくれ。何だその焼くって言うのは。いや、神による炎……まさか、竜族の始祖による奇跡か!? 流石にそこまでの火力に耐えられる自信はないぞ!?』

「我らが始祖はちゃんと害意持つ敵だけを選んで燃やしますから、たぶん大丈夫だと思いますよ」

『そう言う事じゃないと思うんだが?』

『そう言う事じゃないと思うんだよ』


 召喚者プレイヤー組の反応に一拍遅れてベルンツさんが気付いたようだが、ダメか? 頼りになるイケオジは悪役顔なだけで怖くないぞ。大丈夫だぞ。

 過去に竜族に対して何かしてたら知らんけど。

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