第2307話 70枚目:ステージクリア

 燃やせる以上はティフォン様が「敵」を逃がす訳もないし、順当に特殊空間に巣食っていたレイドボスは討伐された。……なお、結局名前は分からずじまいである。仕方ないな。引き籠ってる方が悪い。

 というかレイドボス戦そのものより、その後の片付けや何やらの方が大変だった。ベルンツさん達は防御システムの総点検にかかりつつも、主に私への売り込みというかアピールを続けていたからな。大体エルルとサーニャに防がれていたけど。

 ちなみに魔族の人達の脱出については、レイドボスを倒して脱出までのカウントダウンの下に「脱出の意思がある場合は一緒に通常空間に戻ります」と注釈的な文章が増えていたから、たぶん問題ない。


「とりあえず、このステージに挑む場合は魔人族の人を連れて行った方が良さそうですね。あの研究所を知っているならなお良し、でしょうか」

「そうですね。更に言うのであれば、一番友好的なのは今回救助された彼らを連れて行く事でしょう」


 そういう訳で、通常空間に放り出される形になったベルンツさん達は大人気だ。私に売り込みをかけていたのが、周り中から売り込みをかけられる側になっている。目を白黒させているようだが、それなりにまんざらでもなさそうなので大丈夫だろう。

 ……一度クランハウスの島に戻った際、うちの研究施設にいる人達に一応聞いてみたが、「あー、あそこかー。知り合い? 別にいないよ?」みたいな反応だったので、私達があのステージに再度挑戦する事は無さそうだな。

 ただベルンツさん達がアピールしていた中に、この近辺には似たような研究所がたくさんあった、という情報があったので。


「なおこれからは皆さんの内、何名かずつついてきてもらおうと思います」

「えぇー」

「研究したいのですが……」

「今反応が良いところで」

「主に空間に閉じ籠っている魔族の方々とのコミュニケーションを上手くする為の同行なので、無理にとは言いません。が、同行して頂いた場合は特別報酬が出ます。具体的には、こちらのリストから好きな素材を選択できます。数は現地での活躍具合に応じて変化します」


 なおリストには、普段は歯止めが効かなくなりそうだって事でダメって言っている素材、私を含む竜族部隊の人達の抜けた鱗とか、使徒生まれ組のブラッシングでの抜け毛なんかのレア素材が含まれている。

 リストを見て「ここから選べる」って言ったとたんに態度がてのひらクルーだったのはまぁ予想できたし、むしろそうやって積極的に参加してもらう為の餌もとい特別報酬ボーナスだし。もちろん皆の許可はとっている。

 まぁ正直、竜族の皇女わたしだけでも十分じゃないかとは思ったんだが、念には念を、だな。何せ魔族の人達、と言っても、ここまでの、=魔人族、という状態ではないんだから。


「具体的には、全ての元凶である例の国とか、大神の悪夢に出てくる「模造の」シリーズを作り出した系の種族が混ざってきますからね……」


 どういう風に呼べばいいのか分からないのだが、とりあえずまとめて呼ぶなら魔族でいいらしい。どういう分類になっているのかは分からないが、種族名っていうのがそのまま研究内容になるって事だから、大体の場合は秘匿してるんだそうだ(魔族の人達の証言)。

 そもそもの人数自体が町1つとか、下手したら代表数人だけっていう場合もあるからな。人工的な種族変更だから、人数も当然ながら種族特性も全く不明な状態で遭遇する事になる。

 で。そういう人達だからどんな相手であっても・・・・・・・・・・最低限の敬意ってものすら持たない可能性がある、って事で、だな。


「……正直、竜族だからこそ・・・・・・・「敵」認定するよりほかにない、ってパターンもあり得るのが」


 そう。

 頭のねじというか、倫理というか、自分達以外の認識ってやつが、最低な研究所っていうのもまぁまぁあるし。

 そういう所がイベントステージになってて、突入しなきゃいけない、って可能性も、同じくまぁまぁあるって事なんだよな。

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