第2232話 69枚目:不安な空白

 劇的な変化が無いまま、ある意味では大変順調にエリアの攻略は進んでいったが、現在はリアル土曜日の夜もだいぶ更けてきた時間だ。つまり、そろそろログアウトの時間だな。

 ログイン時間の制限ばかりはどうにもならない。そして攻略の効率を上げようと思うと特級戦力とログインタイミングを合わせるのが一番であり、どうしても召喚者プレイヤーの稼働率が一気に落ちる時間というのが存在する。

 流石にいくら私が全力で魔力を込めたところで、内部時間で丸1日も持つほど丈夫な壁系魔法は作れない。まだ持続時間が長い罠型の魔法や、持続時間など関係ない物理的な罠も設置されているが、モンスターの数が数だからなぁ。


「……(内部時間)明日が正念場ですね。私は起きれませんけど」


 だから住民の仲間に託すことになる訳だが、途中まで「敵を与える」奇跡による地獄もとい非常に激しい戦闘をしてたからなぁ。その流れでそのまま参戦している人は多いだろうし、いい加減長い時間戦っているから疲れてもいるだろう。

 円盤の残り部分に戦力を集中させるついでに、住民の仲間に一度下がってもらっているならまだ大丈夫かもしれないが、エルルとサーニャが下がってる訳ないしな。

 というか、だからモンスターの大部分が抑え込まれていても、砦付きの防壁や、最終防衛ラインとなる要塞の修復及び物資の運び込みが続けられていたんだろう。召喚者プレイヤーが動けない間も戦えるように。


「もちろん、今戦っている場所の背後にも同じ構造の迎撃拠点が作られているでしょうし、そちらにも物資が運び込まれてるでしょうけど」


 その物資の量については、うん。イベントが終わったら何日かの余裕がある筈だから、そこで頑張って作るしかない。種ガチャで出てくる消耗品も流通してる筈だし。生産職召喚者プレイヤーも頑張ってる筈だ。

 だからたぶん大丈夫……と思っている間に、司令部からアナウンスが響いた。最前線の砦や要塞は突破される可能性がある為、後方の安全な場所でログアウトして下さいと……まぁそうだな。

 だいぶ工事も進んだことだし、工事が進むにつれてモンスターの強さも下がっている。もちろん工事現場へはどこからともなく現れたモンスターが襲い掛かっているのだが、エリア中央から出てくるモンスターよりはずっとマシだしな。主に強さと厄介さが。


「さて、私も一度引き上げましょう。ルイシャン、無理はしない程度に後を頼みます」

「ピュイ!」


 主に途切れないモンスターの群れと復活レイドボス「囲い抱える飽溶の水禍」の動向に対して、主に防衛しきれるかという点で若干の不安はあるものの、実際に時間がないのは仕方ない。

 今までだったらなー。ここまで不安にはならなかったんだけどなー。たぶん司令部も、内部時間1日ぐらいなら延々モンスターの群れを迎撃するだけで済むように調節してる筈だし、大丈夫だとは思うんだけどなー。

 ……何故って、だってこいつギミックボスだろう? オリジナルにしてもここまでの攻略にしても。散々ギミックだらけだったじゃないか。それが……ここにきて、力押しが最適解なモンスターの群れの召喚?


「絶対に何かあるんですよねぇ……」


 何も無い訳が無いんだよなぁ……! と思うが、時間はどうにもできない。

 かなり不安だが、流石に徹夜は出来ないからな。なんかもう考えれば考える程不安になってくる気がするし、ここで一回考えるのをやめておこう。

 で。たぶん大丈夫。きっと大丈夫。と、自分に言い聞かせる感じでクランハウスに戻ってログアウト。もちろんすぐにリアルでも就寝。ここで寝ておかないと後が大変な事になる。

 ただまぁ、流石に眠りは浅くなっていたのか、朝いつも通りに起きたつもりでも若干頭が痛かったが。それでもいつも通りに着替えて朝ご飯を食べて、軽く外部掲示板をチェック。


「……は?」


 したら。

 そこに「レイドボスが形態変化して大暴れしてる」という感じの書き込みが大量にあって、大慌てでログインする事になった。

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