第2233話 69枚目:変化発生
「あのオリジナルからしてギミックだらけの奴が相手でそのまま普通に殲滅戦が続く訳ないじゃないですか!!」
そしてログインしてすぐにクランメンバー専用掲示板と、司令部が更新する全体連絡スレッドを確認し、恐らく私は過去最速でクランハウスを飛び出して最前線へ移動した。エルルもサーニャもルイシャンもいないが、仕方ない。
何せ全体連絡スレッドに中級者以下の
もちろんクランメンバー専用掲示板にはここまでの経緯がざっくり書いてあると同時に、ログインして出来るだけ早く前線に来てほしいという内容が書き込んであった。最前線のどこに移動してどうしてほしいかも書き込んであったので、私の動きに迷いはない。
どうしてこうなったかと言えば。
復活レイドボス「囲い抱える飽溶の水禍」が、中央から無数の触手を伸ばして振り回し始めたからだよ!!
触れれば碌な事にならないそれらは合計で10本まではカウント出来たものの、それ以上は観測どころではない上にぶつかっては融合し、先端から分かれるようにして増えて、本数が確定しないらしい。
今のところは10から20本の間で変化しているものの、総合本数というか体積は増えているので、時間経過とともに増えていくタイプだ。なおかつ厄介なのが、その漆黒の触手のようなものはここまで同様、攻撃への反射能力があるって事だ。
つまり、手が出せない。少なくとも積極的には。ではどうすればいいかというと、これまで通りなのだからある意味当然、ギミックを解くしかない訳だ。
「到着しました! 領域スキル、最大展開開始します! 各自行動事故に注意して下さい!」
「分かりました!」
前回のログインまで儀式をしていた儀式場のある要塞の屋上に辿り着き、旗槍の旗部分を広げながら観測班らしい人に声をかける。そしてそのまま宣言通り、自然回復力を削らない限界まで、とにかく範囲を広く領域スキルを展開した。
領域スキルの効果範囲がセット装備の効果範囲だ。だから一気に補正が入る。何せモンスターの群れはそのままだからな。もっとも、私が領域スキルを展開した以上、その出力が低いと言ってもそれなりのペースで倒れていくんだが。
ま、最大展開した以上はエリア中央のすぐ近くまで領域スキルの範囲が届くし、触手の形で振り回している以上は中央周辺なら相手の攻撃が届くという事。つまりだな。
「っ! ……あぁもう、やはり反則ですね。領域スキルの反射、というのは」
ばちんっ! という弾けるような音と共に、左腕に痛みが走った。しっかり鎧というか小手に包まれているから外からは見えないが、領域スキルを反射された分のダメージが入ったんだろう。
本当に厄介なのだが、それでも領域スキルを展開する必要がある。この理由は、今も暴れ続けて体積を増していく「囲い抱える飽溶の水禍」を攻略する為に必要だからだ。
エリア中央の本体を確認した段階で、本体がエリア中央の特殊ダンジョンの内部にある事は分かっていた。だがその特殊ダンジョン内部は「囲い抱える飽溶の水禍」本体で埋まっていて、そのままだと死に戻るだけだった。
その状態はこの大暴れが始まっても変わらず、外に出ている部分は反則的な反射能力を持っている為手が出せない。モンスターを倒しても減った様子が見えないし、どうしたものかと思った矢先、妙なドロップ品を落としたモンスターが混ざっている事が分かったらしい。
それは見た目は野球ボールぐらいの黒い玉で、アイテム名は「分裂用核」。何じゃこら、と司令部に報告した
何事!? と驚いた発見者とその仲間及び周囲で様子を見ていた
で、抜け出て丸くなった漆黒の元触手はしばらく転がり、触手が絶対届かない距離で、散々見慣れた水の柱みたいな形になって止まったようだ。まさかと思った
他の挙動もここまで出てきた水の柱と変わらず、強いて言うなら水の玉を1つ出現させるたびに縮む幅がものすごく小さいっていうのが違いだが、それでもまぁ、削り方は分かった。では後は、その「分裂用核」とやらを効率的に集める方法を探すことになる訳だが。
「司令部より連絡! 「分裂用核」を所有するモンスターが確認されました! 推測通り、領域スキルの影響を受けていないようです!」
どうやってそれを確定させたのかは分からないが、まぁ、ここで領域スキルの出番になるらしいんだよな。
大体のモンスターが勝手に転んだり倒れたりする中で、単独でピンピンしてる奴がいたらそれを狙って狩ればいい。「分裂用核」自体は
また投げたら抜けて転がるまでは自動で攻撃を受け付けない代わり、エリアの外まではいかないし、他の水の柱の近くにはいかないそうだ。全自動って事だな。あとは、それを使った時点で、ある程度「囲い抱える飽溶の水禍」の体力バーが削れるらしい。
「引き抜いているように見える以上、ある程度はダンジョン内部に隠れている体積も減っている筈ですし。という事は、外で暴れている分を全部引き抜けば、内部の探索が出来ると、恐らくそう言う事でしょうね……!」
ばちっ! と再びダメージが入るが、まぁ致命傷には程遠い。問題は無い。
もちろんその特殊ダンジョン内部もギミックだらけなんだろうが、とりあえず表面から大人しくさせないとな。水の柱の処理だけならもう慣れたもんだろうし。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます