第2226話 69枚目:余裕捻出

 それでもどうにかギミックダンジョンの攻略を進め、再び上空からの降下で残っているダンジョンへ召喚者プレイヤーの集団が突入していった。モンスターの群れも倒され続けているし、やっぱりダンジョン(モンスター出現スポットに変わった分も含む)の数は減っていったんだろう。

 回復する様子の無かったリソースの内、最初に回復し始めたのは、当たり前だが体力(HP)だ。ついでスタミナ、最後に魔力が6割から回復していく。


「それでも8割まで戻ったところで前後するんですから、まだ回復が間に合っている訳では無いんですが……」


 炊き込みご飯おにぎりを食べつつ全体の状況と自分のリソースを確認するが、ダンジョンの数が減るからと言って、モンスターの総量が変化する訳じゃないんだよな。何せエリア中央、黒く濁った水で出来た円盤のようなものの残りから、絶賛モンスターが出現しているからだ。

 ひっきりなしに大規模攻撃が叩き込まれて、地面を抉って堀にする勢いで殲滅されているのだが、それでも一瞬地面が見える程度の効果しかない。総数がどれだけなのか、なんて、考えるだけ無駄だ。


「とはいえ、魔力が多少なりと回復したのならば出来る事も増えます。いくら大規模攻撃を叩き込んでいようと手が足りている訳ではありませんし、何より領域スキルの範囲内は魔法の射程と同義です」


 まぁ実際は視線が通るか通らないかで変わるんだが、今は領域スキルの範囲が全部見えているから大丈夫。旗槍を旗状態のまま両手で構え直し、大規模攻撃が叩き込まれている場所の、更に奥へ狙いを定める。

 声をかけるのは私と契約してくれている精霊さんだ。当然使うのは精霊魔法。もちろんメインに全属性を揃えている。いやぁ、レベルが上がる=好感度が高くなると、こんな事も出来るんだなぁ。


「通しませんし害させません。私の後ろには、ようやく取り戻した大地と環境があるのです。未だ足りないとはいえこの土地の精霊も。捕らわれ傷つけられた彼らが、やっと本来の姿に戻った場所が」


 というか、私とずっと一緒に居るからか、あるいは契約した状態で私が進化したからか。あるいは他の条件があったのか、常に私と一緒に居る精霊さんは何かちょっと成長している。頭身が、通常の精霊さんが2か3のところ、5か6はあるんだよな。服も豪華になっているし。

 もしかすると、こういうことが出来るようになったのはそっちの変化なのかも知れないが……まぁともかく。


「だから延々と足踏みを。その場をぐるぐる回るように。それでも押し通るというのなら、苛烈な反撃を覚悟する事です! ――[エレメンツ・メイズ]!」


 魔法の詠唱としてならあまりにも型破りなそれは、実質精霊さん達への演説だ。何故なら皇女教育に入ってたからな。出陣前とかに士気を上げる為の、良い演説をする方法っていうのが。

 そして精霊さんの士気を上げるというかやる気を引き出し、私の視力で狙いを定めた場所に出現したのは、この遠くから見ても分かる規模の、迷路だ。

 ただし、その壁は全て壁系魔法で作られている。相殺して消耗が起こらないようになっているから、遠目からだとゲーミング迷路って感じだが、その威力の方は、まぁ、な?


「これで、多少はエリア中央からの圧がマシになるでしょう。今のうちにダンジョンから出現する分と、ダンジョンそのものを片付ければ、私が一度引っ込むぐらいの余裕は出来るでしょうか」


 ……。

 ただ、精霊の気配がするのか、それとも大規模でそこに留まる魔法だからか、元ダンジョンの出現スポットから湧いたモンスターもその壁系魔法の塊に向かって行くとは思わなかったな。

 まぁモンスターが減れば減る程こっちに余裕が出来るのだから、勝手に減ってくれる分には何も問題ないんだが。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る