第2224話 69枚目:立て直し完了

 どうやら増殖するダンジョンの本体に突入するやり方は、ざっくり周囲のモンスターを大技でまとめて吹き飛ばし、その一瞬の隙に上空から飛び込む形で安定したようだ。……いや、敵拠点の強襲とかで、ゲームや映画で出てくる形だけどさ。

 それでも突入者が結構いるっていうのは、増殖する元となるダンジョンの攻略自体は完全なギミックであり、戦闘力はさして必要ないからだろうか。ここまでの激戦を見たか参戦したかで、後方に下がりたいって言ってる人が割と多かったようだし。

 まぁ一度最前線に来て戦力カウントされてる以上はそうそう簡単に手放されないんだけどな。最前線は人手が足りないんだよ。もちろん本気でダメそうだったら素直に下がってもらうだろうけど、その辺はベテラン勢や司令部の判断だし。


「その後方へ下がる希望を出したのが、手順が公開されている方法で、最速育成した人間種族の召喚者プレイヤーがほとんどって時点で、頑張れとしか……」


 ちょっと素が出てしまったが、まぁ、うん。……最速育成した人って、その、うっかり転生しないまま来ちゃったり、住民の認識がNPCのままだったりするらしいから……。(掲示板情報)

 何せ最前線だと、召喚者プレイヤーも住民の仲間もごっちゃで動いてるからなぁ。普通に会話して何なら退避支援してもらって、お礼を言おうと掲示板で探したら「え、あれ住民NPCだったの!?」って気付く、みたいな書き込みがちらほらあって。

 ともあれその調子なので、推定巨大クラゲ出現阻止の為に、大量のモンスターが出現している。ので、それを全力で迎撃しているのが現在な訳だが。


「……なるほど。二重の意味で妙に多いと思ったら」


 改めて全体というか、モンスターの出現地点を探す。容赦なく地形ごと抉るような大技が定期的に叩き込まれているのが増殖するダンジョン周辺だろう。だがそれ以外にも、主にエリア中央からやってくる塊がある。

 そしてそれは、黒く濁った水で出来た円盤、そのこちらから見て向こう側3分の1か4分の1残った部分から湧いて出ているらしい。湧いてというか、あの黒く濁った水のようなものがモンスターに変換されているんだろうが。

 私から見て扇形に元円盤が残っている。という事は、それ以外の部分は全部消えてるって事だ。では何故消えたのか? それはまぁ、水晶玉によってダンジョンの元となったからだろう。


「あの円盤を半分以上削り切るだけのモンスターが出現していれば、それはまぁ地獄になりますよね。とはいえ、残していても尽きる様子の無いモンスターの群れになっただけみたいですけど」


 若干「囲い抱える飽溶の水禍」の行動開始条件が分からなくなったが、まぁそれは今問題じゃない。どっちかというと、現在の状態でどうにか立て直したものの、割と拮抗してるって方が問題だ。

 何せ私はこの後、一旦ログアウトするからな。私の領域スキルありきで拮抗している、というのは、あんまりよろしくない。何せ補正がちょっとシャレにならないぐらい大きいからな。

 多少なりと余裕がないと危険だ。……というのはベテラン勢なら当然分かっているだろうし、司令部も織り込み済みだろう。だから立て直しが終わり次第、その余裕を作る為の行動を起こしていると思うのだが。


「……セット装備には旗槍も含まれていますから、儀式場に領域スキルを移して維持してもらうにしても、旗槍だけを手放した時点でセット効果が発動しなくなるんですよね」


 まぁもちろん承知の上の筈だ。少なくとも司令部は。何せカバーさんから情報が、詳細を隠しながらも大事な部分は押さえる形で伝わっている筈なんだから。その辺ぬかる人達ではないだろう。

 ……ま、あと2時間はたぶんこのままだからな。とりあえず今残っている増殖するダンジョンが1つぐらいは攻略されて消えるだろうし、それでモンスターの圧が緩んだら余裕もできるだろうか。

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