第2222話 69枚目:決戦序盤

 まぁいくら混乱しているって言っても、それは最前線で混戦状態になっている場所の話だ。そしてそこすら、ベテラン勢を中心に立て直そうとする動きはある。エルルも応援に行ってくれたし、サーニャも動いているだろう。

 供給能力を開放しているので、領域スキルへのリソース追加投入は無し。だがそれでも上限として設定した6割から回復していかないので、全体の消耗に回復が追いついていないって事だ。

 それでも多少は回復しているだろうし、私の回復力が通常召喚者プレイヤー何人分だっていうレベルなのは分かっている事だ。何より、司令部と観測班は通常運転って事だし。


『全体連絡! エリア中央の漆黒部分に対して【鑑定】スキルが通用、レイドボスの名称が判明しました! 名称は「囲い抱える飽溶の水禍」! 「囲い抱える飽溶の水母」を元としたレイドボスで確定しました!』


 だから、私が領域スキルを維持した状態で様子を見て、結果装備のセット効果で全体支援と範囲攻撃を叩き込んでいる間に、ちゃんとやる事をやっていたようだ。……エリア中央の漆黒部分? となったが、黒く濁った水のようなものが、真っ黒になっている部分があったんだろう。それが本体だったらしい。


『また謎の脱力については、「レイドボスとの距離と時間を係数とした数値」が一定を越えた場合に発生する模様! 近い場所に長くいた場合ほど脱力時間が長引くと推測されます! ただし神の祝福ギフトを2種類以上保有している召喚者プレイヤーか、『勇者』は通用しないと思われます!』

「あぁなるほど、それで最前線に居続けたベテラン勢でも、脱力している人としてない人がいるんですね」


 神の祝福ギフトを2種類。これは持っている人と持っていない人が分かれる条件だったな。人間種族のベテラン勢なら、人間種族に転生し直して1種類は手に入れている可能性が高い。だがもう1つとなると、一気に保有者が減る筈だ。

 それに加えて、レイドボスとの距離と時間か。それが今この瞬間に発動したって事は、レイドボスの本体が待機状態か何かだったのか? いずれにせよ、時限性の状態異常を積み込まれていたようなものだ。やってくれた。

 なおかつ。


『またこの脱力は分類上、状態異常ではなく封印に属します! 対処として状態異常の解除ではなく、封印の解除を行ってください! 封印の解除が出来ない場合は付近の拠点へ! 解除可能な召喚者プレイヤーが待機しています!』


 そうきたか。まぁそうだな。状態異常の解除であれば、前線はもう立て直せている筈だ。この全体連絡を聞く前に「どんな状態異常も治療できる」高いポーションとかお札を使ってる人がそんなにいないといいけど。いないとは思わない。たぶん何人かはやらかしてる。

 しかし名前が分かって、脱力という形の特殊な封印が表に出た割に、見た目には何も変化がないな……? こういうのって、本体が動き出したから発動した、ってパターンが多いと思うんだけど。


『なおレイドボス「囲い抱える飽溶の水禍」はエリア中央の特殊ダンジョンに本体があり、現状突入しても即死に戻り体力を回復させる事しか出来ない為、突入は厳禁とします! 繰り返します! エリア中央の特殊ダンジョンは現状突入厳禁です!』


 あ、そういう。

 ……今はダメって事はやっぱりこれ、外から削って隙間を空けないといけないんだろうなぁ。ただ漆黒って表現だったから、たぶん密度は上がってるだろうから、あの円盤だった部分の密度に換算してどれくらいかは分からない。

 これ、またあれかな。ここまでと同じだけの体力もしくは体積を削らないといけないパターン。しぶといからいい加減にしてほしい。


「……。流石に、無いですよね? その、漆黒部分に成長する武器を放り込んだら、超強化の更に上が出てくるとか……」


 何かそういう事も思いついちゃったが……。

 うん。黙っとこう。

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