第2220話 69枚目:決戦準備
私が断言しないのは、断言できないだけの理由があるからだ。それが分かっている上に、今まで散々レイドボスと呼ばれる相手に理不尽な展開とリソース量を見せつけられてきた事を知っているエルルは、内部時間明日、リアル今日の夜に「敵を与える」奇跡による大規模戦闘が2回行われる、という可能性を否定しきれなかったらしい。
大変頭が痛そうだったが、そこから帰ってからは部隊の人達全員に、しっかりと十分休んでおくように、って言ってたからな。そしてエルル自身もさっさと自分の部屋に引っ込んだって事で、竜族部隊の人達がだいぶ動揺した後、ばたばたと全力で休みに向かったようだ。
もちろん使徒生まれ組を始めとした他のうちの子も、生産組以外はちゃんと休んでいる。なお生産組の中でも双子は罠の設置や防壁の構築に関わっているらしく、引き上げる直前に最前線で動いているのを見かけた。
「何時の間にやら、あの2人も出世しましたねぇ……」
なんか、羊っ子印がついた罠とか悪戯グッズは質がいいって、ブランド化してるっぽいんだよなぁ……いや別にいいんだけど。うちの子が認められるのは良い事だから全く何も問題は無いんだけど。
しかし、そっち(罠とか防壁)の方で活躍するとは思ってなかったなぁ……って、ちょっと思うだけで。いやまぁ、ある意味そっちの方向へ育てていたのは私なんだけど。コトニワ時代の。
という事もありつつ、午後もやはりそれなりにログイン時間を残してログアウト。今日の残り時間は、合計でリアル4時間ちょっと、と言ったところだろうか。午前と午後で半時間ずつ残したから。
「とはいえ、これ全部を使い切れるかっていうとだいぶ厳しいか……スタートは動かせないし、途中で1回はログアウトしないといけないし」
まぁ、使い切れなかった時は仕方ない。ちょっともったいないが、速やかに諦めよう。
それでも何とかしたいのと、2回やる予定があるからか、あるいは少しでも早くエリア中央に到着して反応を見たいのか、いつもよりかなり早めの予定に間に合わせるべく夜のルーチンという名の日常を早回しだ。
結果? ……んー、ちょっと遅れた。晩御飯が歯ごたえのあるメニューだったからなー。美味しかったんだけど別の日にしてほしかった。
「それにしてもさ」
「どうしました、サーニャ」
「今までも召喚者はこういうのを作って来てたじゃないか。でも最近やってなかったのは何で? やれば出来るし、作った方が楽なのに」
「あぁ……それはそうですよ。だってここ最近は、精霊主導の工事をする前提でしたからね。大物を作ると、解体の手間がかかるでしょう?」
「どうせ攻撃の余波で地形が変わるんなら一緒じゃない?」
「だから今回は作ったんですよ」
「なるほど!」
そういう会話もあった、かつ、エルルがサーニャに私の送迎を任せて隊長する必要がある程度にはガチな防衛態勢が整えられてたって辺りで
流石に儀式服では戦えないからね。というかいくら何でも、「彩られゆく空白の旗」で戦う訳には行かない。ちゃんと戦う為の装備があるんだから、そっちを使うよ。
「ところで姫さん」
「なんでしょう」
「姫さんもそうだけど、何か召喚者が「連戦」のつもりで準備してない? あれの後に何か出てくるって事?」
「……まぁ、念の為ですよ」
「何か出てくるとは思ってるんだ……」
地頭が良い上に、今回は何だかとても全力のサーニャが「エリア中央に辿り着いたら元凶が出てきて連戦になる可能性がある」という話を知らないって事は、エルルが話をしてないって事だ。
それを私から言うのは違うだろうって事で返事を濁したんだが、もしかして「連戦のつもりで準備してる」っていうのはサーニャが自分で気付いた事なんだろうか。
うん……いやまぁ、よーく見れば分かるかも知れないけど、ここまでの「敵を与える」奇跡を願っての大規模戦闘があったら、これだけの準備をしててもおかしくない筈なんだが……相変わらず、戦闘が絡むとすごいな、サーニャは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます