第2219話 69枚目:加速と予定
という、万全というか、他の場所で見たら過剰火力な防衛準備が進んでいるのを見ながら儀式場について、「第一候補」と共に「敵を与える」奇跡を願い、歌って踊った訳だが。
うん。
作業しながらであっても、やっぱり前回の様子を見ておくんだった。
「う――――わ……これは、酷い」
「これでもマシなんだぞ。昨日に比べれば」
内部時間昨日、リアル午前中のログインの時はエルルの疲れっぷりもあったし、実際そこに倒れてた人も何とか自力で撤退できるようになっていたから、地形の変わりっぷりはともかく「地獄だったんだなー」で終わっていたが。
まさかさぁ……霞網とその柱はともかく、あれだけガッツリ、本気と書いてマジで読む形で作られてた堀と壁が、半分以上全壊してるとは思わないんだよなぁ……!?
まぁ「これでもマシ」というエルルの言葉通り、残っているものの半壊している防壁及び砦の修理と、全壊した防壁と砦の再建、それらとセットになっている掘の修復が既に開始されているんだが。
「後で観測班の映像も確認しますけど、何が来たらこんなことになるんです?」
「デカいクラゲ。
「それはひどい……もちろん普通のと言いつつ十分に強い個体の群れも出た上で、ですよね?」
「そうだな」
なおエルルの服(鎧)も、あちこち応急処置したっぽい跡がある。私がこうやって屋上から呑気に全体を見ている、儀式場がある城クラスの要塞にも結構なダメージが入っていて絶賛修復中だし。
まぁその修復中だから、儀式場ではなく屋上に出られたんだけどな。どうやら歌って踊っている途中で、壁がミシッと鳴ったのはモンスターの突撃のせいだったらしい。ちょうど踊りで踏み込んだタイミングだったから、力加減を間違えたかと一瞬ヒヤっとしたんだが。
なお、その状況でもまだ動くのに他の人の助けを借りないといけない人が多いので、私は領域スキルを展開したままかつ供給能力もそのまま、こうやって全体を見ている訳だ。
「まぁ案の定というべきか、司令部はあの円盤に対して、出来るだけ広い範囲を削れるように水晶玉を投げ込んでいたようですから、この分だと明日(リアル夜)予定の奇跡による大規模戦闘は1回で済むでしょうか」
「……。お嬢」
「はい」
「1回で済む、って言ったか?」
「言いました。もし中央に辿り着けないようであれば、(内部時間)明日の大規模戦闘は2回行われる予定ですよ」
「あれを、2回する気か……?」
「時間がありませんからね」
わぁ、エルルの本気あ然顔は初めて見た。……いやまぁ、私もこの規模の戦闘だったっていうのを知ったら、司令部マジかよ、って思ったけど。
「ただ今回の削れ方を見る限り、恐らくは大丈夫です。(内部時間)明日の1回で中央に辿り着けると思います」
「……。で、お嬢はそう上手くいくと思うか?」
「……いけばいいなぁ、とは思ってます」
ここで何を察したのか、私に話を振ってくるエルル。ちょっと視線をそらしながら言葉を濁す事になってしまったが、流石に絶対上手く行くなんて断言が出来る訳ないんだよなぁ。
何しろちょっと考えるだけでも、円盤の中央は密度が高いとか、別の角度から集めてくるとかっていう可能性が思いつく。エリア中央の地下に予備リソースがある可能性もあるし、それこそ出力の高い状態異常の積み込みをしてきて、それを元に回復されるだけでも大惨事だ。
何より、これらの可能性は全て、完全には否定できない。何故なら、今までが今までだからな……!
「つまり……「本来の」予定通り、2戦連続でこれがある可能性は、ある訳だな……?」
「……どころか、円盤の中央に辿り着いた瞬間に、ここまでと同様の超大型であり、この地域を変容させた原因が出現して、そのまま連戦、とかいう可能性もありますねぇ……」
その辺、本当に、司令部でも推測しきれないぐらいの出たとこ勝負だからなぁ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます