第2217話 69枚目:加速実行

 で、内部時間6時間後。


『現時点をもって残敵掃討を完了、戦闘終了となります。繰り返します。残敵掃討を完了、戦闘終了となります。参加者の皆様、お疲れ様でした』


 という拡声された全体連絡を受けて、私と「第一候補」は動きを合わせて踊りをフィニッシュし、奇跡の終了を願った。ふー、踊った踊った。楽しかった。

 なお予定時間は内部時間で4時間だったが、水晶玉を投げ込むのを止めてもしばらくはモンスターが出現し続ける。だから残敵掃討、まだ飛んでくる途中の水晶玉や、既に出現しているモンスターを全て倒し切るまでは奇跡を維持する必要があった訳だ。

 しかし歌って踊るのに集中していたから掲示板も見ていないし、同じく集中していたから外の様子も分からない。領域スキルは全力で展開していたが、特殊効果は切ったままだし。


『次回開催は司令部からの全体連絡をご確認ください。繰り返します。次回開催は司令部からの全体連絡をご確認ください。なお、エリア中央までの残り距離は約3分の2です』

「今回のこれがあって残り3分の2……結構厳しいのでは?」

『で、あるな……。まぁ進めば進むほど、周りから集めるにも限度があるはずであるが』

「まぁ今回は相手を削る事を優先する為に、見えた断面へこちら向きに飛ぶよう撃ち込んでいたようですし」

『ならば、思ったよりは削れているやもしれぬな。一点を穿つよりも、周りごと削っていく方が確実なのは確かである故』


 息を整えるのとお迎え待ちでそんな会話をしていたが、誰も来ない。私の方にも「第一候補」の方にもだ。おや?


「……ところで、誰も来ませんね?」

『……余力が無いのやも知れぬな。こちらは範囲を重視した回復の奇跡を願うが、そちらはどうする?』

「元と受け手の両方に上限付きで供給能力を開放します。私の方が6割を切らなければ大丈夫でしょう」


 外の様子は分からないけど、楽な戦いな訳が無かっただろうしな。誰も動けなくなってるか、負傷者や本気で動けなくなってる人のフォローに入っているのかもしれない。モンスターの殲滅は終わっているから追撃は考えなくていいだろうが、それでも広域回復は必要だろう。

 って事で、私と「第一候補」でそれぞれに周囲へ回復を配る。ってうわ、供給能力を開放した瞬間に供給限界まで持ってかれて回復しないんだけど。供給先はリソースが3割まで回復したら止まるようにした筈だぞ?

 どんだけ限界まで振り絞る、場合によっては限界を超える戦いだったのか……。


「急に動ける奴が増えたと思ったら、やっぱお嬢か」

「お疲れ様でした、エルル。しばらく待っても誰も来なかったので、迎えに来るどころではないのかなと思いまして」

「…………まぁな」


 嘘だろ。

 エルルをして否定が返ってこなかった、だと……!?


「とりあえず、もうしばらくはこのまま維持するつもりですが」

「その方がいいかもな……」


 まして、リソース配りに否定が返ってこないどころか同意だと!?

 しかもいつもならちょっとは苦い顔するのに疲れた顔で普通に同意とか、外はどうなってんだ!?


「とりあえず、この後私は島に戻って消耗品を作成します。島に待機してもらった人もいますし、エルルも休んでくださいね」

「……。ところでお嬢」

「なんでしょう」

「さっき全体連絡で、次の予定があるって伝えてたが、いつだ?」

「明日です」

「……」

「ちなみに、明後日にももう一回やります」

「…………分かった、休む」


 しかもその上エルルが素直に休む事を受け入れたとか……!!

 地獄か。地獄だな。文字通り死屍累々ってやつだ。きっとそう。

 でも内部時間明日と明後日、リアル午後と夜にもまたやるし、夜は召喚者プレイヤーの稼働率が高い事を考えて、2回やる可能性があるんだよな。

 全体連絡スレッドにそう書き込んであったから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る