第2216話 69枚目:加速準備
なお司令部曰く「余力を残して時間切れになったら意味がない」だそうだ。まぁそれはそう。……それはそう、なんだが。うん。
ベテラン勢には事前にクラン単位で参加の打診が行われていたとの事で、『アウセラー・クローネ』が一番後かつ不意打ち気味の連絡になったらしい。いやまぁ、そういう事に一番臨機応変に対応が出来て、まず断らないのはうちだろうけど。
とはいえ、私がやるのはコトニワの感謝祭の衣装に着替えて、全力で歌って踊る事だ。ただし手に持つのはいつもの旗槍ではなく「彩られゆく空白の旗」だが。
「待て待て待て待て待って「第三候補」、それあの神様の旗だよな!!??」
「いくら私の信仰値が高くとも、衣装と儀式場を揃えた御使族に出力を合わせるにはこれぐらいは必要、だそうで」
「もー!! これだから神関係特化種族は!!」
それを持ち出しているのを見て「第四候補」が待ったをかけてきたが、理由を説明すると頭を抱えてしまった。それなんだよなぁ。まぁ衣装と同じく儀式用の旗を作ったのも御使族、っていうのもあるだろうけど。
そして移動して見れば、最初の内しばらくの間しか持たない、というのが分かり切っていても、戦場にはびっしりと罠が仕掛けられているらしい。だけでなく、儀式場を中心にした臨時の砦には、それこそ南北の大陸を繋ぐ橋に設置されたのと同じ、過剰威力の防衛兵器が設置されていた。
……まぁ、それぐらいは必要かなぁ。と、遠い目をして納得するしかないのだが、私の格好(たぶん主に持ってる旗)を見て、ベテラン勢だろう悲鳴が聞こえたのは仕方ない。頑張ってほしい。
「……私がいる方より、「第一候補」がいる方が、たぶん苛烈でしょうしね。私の方が、出力を合わせる側ですし」
「そもそも御使族が最前線で儀式をするって時点でおかしいんだからな?」
「ていうか、神の旗を使って底上げしたって言っても、御使族と儀式の出力を合わせられる姫さんがすごいんだよ……」
まぁ、ボックス様は最高だからな。もちろん“ナヴィ”さんも。
私の姿を見たらしいベテラン勢が「いいか絶対に出し惜しみするな!」「無駄死にしたくなければ出し惜しみするなよ!」「絶対にこの場では出し惜しみすんじゃねぇぞ!?」と口を揃えて何度も何度も周囲に警告を飛ばしている中で儀式場に到着。
例によってテレビ電話的魔道具が設置されていて、そこには私と同じ感謝祭の衣装に着替え、感謝祭の踊りで使われる旗を持った「第一候補」が映っていた。
「スーツより儀式服の方が似合っているのは種族特性ですか?」
『くはは! まさかあそこまでギリギリの大きさだとは思わなかったのである!』
それは第一回イベントでの、初めての顔合わせの時だ。お互いに今と大して変わらない姿だという事は、あの時の未来予測はほぼ当たったという事になる。すごいな。
『まぁともあれ、お互い最善を尽くそうではないか』
「そうですね。その分だけ外は過酷になりそうですが」
『時を稼ぐために必要な労力であろうよ。それに、こうでもなければ切れぬ手札もあるであろう』
「超強化された装備の特殊効果によってはそうでしょうね。流石に今回は巻き込みも多少は致し方なしでしょうし」
『気遣いにも限界があるであるからなぁ』
「閉鎖空間では自爆するしかない手札もあるでしょうしね」
そういう会話をしている間に、司令部の人による、拡声された声によって作戦開始まであと5分、という指示が響いた。外での騒がしさが一層増したようだが、腹をくくってほしい。
なお今回、水晶玉を少しでも多く放り込まなければならない。かつ、同じ方向に連続して飛ばさなければならない。って事で、ピッチングマシンによって水晶玉が撃ち込まれるらしい。それも今回は少しでも削る事が目的なので、セットできる上限の大きさが使われているようだ。
つまり、1個で出現する敵の数が、多い。……ま、間断なく飛んでくるなら、元の大きさであっても同じことかも知れないが。
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