第2212話 69枚目:形状確定
そこから一時間ほどダンジョンの大量発生、もとい、黒く濁った水で出来た輪あるいは円盤を削る動きは続いたが、司令部からの全体連絡と共に一旦中止となった。
「あー、それで。途中から飛んでいく角度がおかしいのが混ざっていると思ったら」
「どれだ?」
「ほら、かなり上空を、放物線を描いて飛んでいくやつがあったじゃないですか」
「……。あれか。後方で結構な騒ぎになってたが」
「対処は出来ているようなのでセーフです」
放物線を描くって事は、それだけ飛距離が稼げるって事だからな。まぁ出てくるのは強制入場とはいえ、ひたすら仕掛けを解きまくるギミックダンジョンだ。周囲に出てくるのも中の上から上の中までぐらいの難易度のダンジョンと、ひたすら仕掛けを解きまくるギミックダンジョンの二択だし。
そもそも、工事現場やその後方の工事が完了した地域に実力者がいないとは言っていない。確かに工事が完了したところにはモンスターは基本的にやってこないが、一部土地を取り返す仕上げをしたり、神殿を始めとした建物の内装工事はまだ続いていたりする。
……戦略的なバックアタックを警戒しなきゃいけない場所でもあるからな。ある程度の戦力は置いてあるんだよ。もちろん、そういうの関係なく、新しい神殿や精霊さんがたくさんいる場所だって事でやってくる
「あれ、どうやら投石機のようなものを用いて、高さから計算できる厚みの更に内側へ投げ込んだものだったらしいんですよね」
「……。厚みの更に内側?」
「こう、輪だったら外から直径が割り出せるじゃないですか。円の全体ではなく、壁の厚さとして換算できる部分が。その内側です」
「あぁ。外から刺激すると、内側が分厚くなっているのか、それとも元々そこにあったものかが分からないからか」
「そう言う事です。そしてそちらに投げ込んだ水晶玉も、飛んでいく軌道こそ他の物と違ったものの、着弾地点で増殖するダンジョンが発生する、という結果は同じだったので……」
「なるほど。輪じゃなくて円盤だったと。……何も良くないな?」
「良くないんですよね」
何1つ良くないんだよな。つまりエリアの中心まで、黒く濁った水で出来たような円盤で覆われてるって事なんだから。凹んだところとかの感じから、黒く濁ったゼリーにも見えるけど。
ゼリーというか水母なんだろうな。と、思いながら、輪ではなく円盤である事が確定した為、小休憩の後修正した方針を発表します。という全体連絡スレッドへの書き込みをもう一度見る。
……修正した方針、なぁ。
「流石に「第四候補」も、数があるとはいえギミックを使い魔に解かせるのは無理があると言っていましたし……既に集められるだけの人数は集めていると思える状態ですが……」
「お嬢?」
「目の前に立ち塞がるのが、輪ではなく、円盤だった。つまりその総合体積が想定よりもはるかに上だったという事です。で、あれば。司令部ならどうすると思います?」
んん、と、情報を整理するのを兼ねて呟きながら考えていると、エルルが聞いてきた。ので、素直に何について考えているのかを口に出す。
エルルはちょっと考えていたが、口を引き結んで眉間にしわを寄せた。そういえば眉間のしわ、ここしばらく見ていなかったな。
「……効率を、上げにかかるだろうな。具体的な方法までは分からんが」
「そうなんですよね。流石にここからこれ以上人数を集めるのはちょっと難しいでしょう。どこからか応援を呼んでくるにしたって、どこから? という話ですし」
「まぁ……俺が動くにしたって、あいつらがお嬢を後ろに下げるとは思えないからな……。一番良くて現状維持、最悪……」
「まぁ有り得ますよね。ダメージの反射と、通常攻撃では削れないのは分かってますから、流石にこのまま無策で、ではないでしょうけど。あと最悪ではないです」
「護衛からしたら最悪なんだよ」
私が前に出る事になる可能性は、まぁまぁ高いよな。
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