第2141話 68枚目:粛々攻略

 すっかり大規模戦闘が展開され、そちらが本命のようになっているが、そもそも私が領域スキルを展開していたのは、土地の力場的除染をする為だ。

 そして土曜日の午前中と午後及び夜のログインまでの時間、儀式場による領域スキルの維持まで含めて内部時間2日と半日弱の間展開し続ければ、当然ながら除染はかなり進む。

 そして半径が半分になったとはいえ、大陸の一部だ。エリア内部に限ってもかなり広い。という事は、いくら手分けして領域スキルを展開していても、まぁ、狙った範囲全てを一度に除染するのは無理だ。


「エルルー。移動の連絡が来ましたので、あの立ち入ると危険な範囲に沿って移動、領域スキルの展開場所を移しますよー」

「了解、通達する」


 ちなみにモンスターの群れが湧いて出てきて襲い掛かるのは、領域スキルに近い部分から、かつ領域スキルの展開者で確定のようだ。まぁそれはそうなんだろうけど。

 なので領域スキル保持者が移動すると、そのまま戦場が移動するって事だ。戦場ではなくなって力場的除染が済んだ場所は、精霊さん達監督の元、各種工事が行われる。

 移動先はまだ野ざらしだったが、これは仕方ないな。ここをどうにか出来るようにするために領域スキルを展開して、土地の力場的除染をする訳だし。


「で。戦っていた召喚者プレイヤー勢がついてくるのはまぁいいとして、当然ながらモンスターの群れもついてきていますね」

「そこは逆なんじゃないのか」

「領域スキルだけでも自主練というか訓練はできますから、モンスターはいらないんですよねぇ……」

「もうちょっと言い方無かったか」


 という会話もあったが、ともかく。領域スキルを展開したままで司令部に指示された場所まで辿り着き、改めて全力で展開。十分距離はとっているし、エリア半径半分の境界線は越えてない、な。よし。

 で。そこまでやってから中継動画を再度確認すると……あー、うん。ログイン直後に見れなかったのもあるが、だいぶ瓦礫が小さくなってるな?

 となるとやはり、あの巨大な樹が本体なんだろうか。偽装関係のスキルを持っているとか? ……でも、最初と比べるとやっぱりどうしても小さくなってるよな。レイドボスが正体も見せずに縮むか? と思うし、やっぱおかしいよな。


「となるとどこかに隠れているかフラグが足りないかな訳ですが、とりあえず今の所何の手掛かりも無いんですよね」


 まぁ実際にエリア中央の巨大な樹、その足元の穴が埋まっているかどうかは分かっていない。瓦礫が上がってきている、というだけだからな。本当は穴が埋まっているのではなく、別の何かが瓦礫を押し上げているだけ、という可能性もある。

 やはりとりあえず、あの巨大な樹とその根元の瓦礫、及びその瓦礫が埋まっている穴をどうにかしないと何ともならないんだろう。フラグはちゃんと踏めって事だな。問題は、そうやっていて間に合うかどうかなんだが。イベント最後の1週間に突入してるし。



 ところで。

 こうやって考えている間も私は全力で領域スキルを展開しているが、展開を続ける事で領域スキルを展開できる範囲は広がって行く。また今回は後方で控えているだけなので、【魔力充化】を切っている分も含めて、リソースを目分量(?)で投入して、自然回復力を鍛えていた。

 まぁこれはいつもの事だし、7割は切らないように調節している。とはいえそうやってスキルが育つと展開できる範囲が広がるので、縦に細長い形、だがそれも上空には制限がついているし、主目的は土地の除染なので、主に地下へ伸ばしていた訳だ。



 とはいえ、エリア半径の半分より外ではある。防壁の残骸みたいなものという分かりやすい目印もあったし、何も問題なんて無いだろう。

 と、思っていたんだが。


 ――――バヂンッッ!!!


 そうやって、地下へ地下へと、僅かずつでも伸ばしていた領域スキル。半径はそのまま、球体を縦に引っ張って伸ばすような形で最長の深さを更新していった先で、何かに「弾かれた」。

 その反応は、当然ながら展開者である私へと跳ね返ってくる。具体的には


「お嬢!?」

「姫さん!?」


 私の左腕が、出血を伴って、ばっきりと折れた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る