第2140話 68枚目:対処中

 領域スキルを展開する防衛戦は、戦闘スキルのレベル上げという意味ではボーナスタイムに近い。というのは、領域スキルを適性などの関係で持っていない、あるいはあえて持たない事を選んだ召喚者プレイヤーにとってはほぼ常識になっている。らしい。

 もちろんステータス・プレイヤースキルの両方で制御力は必要だが、それでもまぁ普通の戦闘よりは効率がいいだろう。第一、領域スキルを展開しても防衛戦って時点で相手の数が多いのはほぼ確定している。

 スキルというのが基本的にひたすら使う事でレベルを上げられるものである以上、戦闘スキルを使う相手は多い方がいい。ただしそれは大体もれなく敵であり、もちろんこちらに攻撃してくる存在だ。


「だからバックアップも交代要員も十分以上に揃っていて、尽きない敵を普段より高いステータスで相手出来る防衛戦はレベル上げに非常に適している、と。まぁそれはそうなんですが」


 という事で、防衛戦が始まってから内部時間1時間もしない内にまとまった人数の応援が到着し、平地に領域スキルを展開しているだけだった防衛戦は、陣形も交代もある立派な大規模戦闘に変わっていた。

 いやまぁ私が中央に突入できない以上、それでいいんだけどさ。ここで戦えば戦うほど相手のリソースが削れて行くのは確かだから、ここで大規模戦闘するのはいいんだけどさ。早いな? 色々と。

 ……まぁ早い分には困らないか。困らないな。うん。問題は無かった。それでなくても土曜日スタートで3週間のイベントの、3回目の土曜日なんだ。


「出来れば削り切ってしまいたいですからね……」


 理由は色々あるが、やっぱり召喚者プレイヤーの稼働率が高いタイミングでレイドボスは討伐した方がいいからな。もちろんここでダメでも、それこそ水曜日の夜辺りに決戦を予定して、合わせられる限りの予定を合わせて、とかは出来るんだけど。

 という訳で、土曜日の午前中は防衛戦で終了。とはいえその頃には簡易とは言えない砦が建設されていて、そこに儀式場を作ってもらったので、領域スキルはそのままだ。防衛戦は人手次第だが、土地の力場的除染は続けられる。

 午後はこまめに出入りする感じの予定をお願いされたので、それに従ってログインとログアウトを繰り返し。しかし敵が減らないな。まぁレイドボスのリソースなんだし、向こうが自主的に出してくる分なんだから、潤沢というか無限湧きなんだろうけど。


「とはいえ、周囲から思いっきり削りにかかっているからか、だいぶ瓦礫も樹も小さくなってきたようですが」


 流石に領域スキルを展開している場所からは……それでも辛うじて影が見えるかな? ぐらいなので、例によって中継動画を見る事でエリア中央の様子を確認している。

 エリアの半径において半分の辺りで激しい戦闘が起こり、そこへ巨大な樹の枝を落として出現させた大物を差し向けているからか、かなり巨大な樹も、その巨大な樹が根を張り抱え込んでいる何かの瓦礫も小さくなってきている。

 ただしその足元にはこれまで同様大穴が開いているのが確認されている上に、土を放り込むと瓦礫が復活するようだ。ただしそれなりの量の土を放り込むと瓦礫自体が上がって来たようなので、穴そのものは塞がっているようだが。


「……となると、やはりあの樹がレイドボスの本体――とするなら、【鑑定】系統のスキルが通らず名称が分からないのはおかしいんですよね」


 まぁでもこの分だと、どちらにせよエリア中央の瓦礫も、その瓦礫が埋まっている穴も、瓦礫と穴に根を下ろしている巨大な樹も、その全てを綺麗さっぱり撃破する必要があるんだろうけど。

 司令部も他に本体がいそうな場所は無いか探しているようだが、とりあえず今の所探索完了した範囲だとそれっぽいものは無いらしい。割と頻繁に空を移動していく人の姿も見るので、空中や上空も探索されている。

 で、それでも見つからないという事は。やはりオリジナル同様地下にいるのか。


「……フラグ不足で見つけられない状態、ですね」


 しかし、見えている範囲を一掃してからが本番か。

 元からしてギミックボスだったから、絶対厄介な事になるだろうなとは思うんだけど。

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