第2139話 68枚目:行動反応

 大別すると影響力の勝負だからか、エリアの外周で各工事が進み、完了した範囲が広がるのにつれて、エリア中央の巨大な樹と、その根元の大きな瓦礫は壊れやすくなっていったらしい。

 まぁ巨大な樹の方は攻撃すると大量の種をばら撒くんだが、その種の勢いが、攻撃力に比例しているとはいえ、ちょっと係数が落ちた感じだったらしい。具体的には回収しやすくなった。

 エリア中央に堂々とそびえているだけあって、あの巨大な樹がばら撒く種が今の所一番質がいいらしい。まぁそれはそうだろうな。レイドボスかどうかは分からないが、あれが一番大きいんだし。


「まぁでも、周りで工事を進めたかいはありましたね。随分と削れやすくなっているようですし」


 さてそんな状況で私はというと、あの防壁の残骸のようなものがあった場所、エリア半径の半分、そのちょっと外側で領域スキルを全力展開し、土地の力場的除染の手伝いをしていた。

 吸収能力はともかく、【魔力充化】をオフにしているとなかなか制御が大変なんだが、まぁそれは制御訓練と割り切ればいいとして。


「ねぇ姫さん! ほんとにあの神様の奇跡は願って無いんだよね!?」

「願ってませんよー」


 何故か少し先、そう、あの防壁の残骸のようなものがあった場所から、これでもかとこの大陸の通常モンスターが湧いてくるようになったんだよね。なので、エルル達はその迎撃中である。

 いやまぁ何故っていうか、そりゃレイドボスが抵抗してるんだろうけどさ。力場的除染による土地の支配権を奪い返そうとしてるんだろうけども。他の場所でも領域スキルが展開されてて、そっちにもモンスターの群れが出てきてるんだから、私だけを狙ったものでもないだろうし。

 精霊さん達曰く、あの防壁の残骸のようなものがあった場所から奥へは入れないし、あの防壁の残骸のようなものがあった場所へは近づきにくいらしいんで、各種工事を進める為に力場的除染をする事になった訳なんだけど。


「まぁそれは当然、抵抗しますよねぇ」


 逆に言えば、あの防壁の残骸のようなものがあった場所を越えて土地を取り返せれば、大きく弱体化が入るって可能性が高い。穴までリソースの、地下に続く瓦礫のようなものが出現し始めたのもそこから先だしな。

 もちろんその境界線の向こうには踏み込んでいないんだが、目と鼻の先まで相手の領域が迫って来ていて、しかも力を削いでくる。自分が弱体化する原因がそこにいるのに、対処しないって訳には行かないだろう。

 穴が無くなっても、見回りは続けないとちょこちょこ瓦礫や植物(型モンスター)が復活してる程度には相手の領域だからな。まぁだから、抵抗そのものも想定内だったんだが。


「しかし、中央の奴が自主的に枝を落とすと大物になるとは思いませんでした」


 うん。まぁそういうことで、結構な頻度で大物が出てきてるんだよな。流石にちょっと種の回収もギリギリだ。

 中央にある巨大な樹が自主的に枝を落とすようになったが、その場合は種を撒き散らさないようだ。撒き散らされても困るが。まぁ、大物になる為に種の分も栄養を使っている、って事なんだろう。

 そして自主的に落とした枝の分も、瓦礫に見える何かを吸い上げるように削って回復するらしい。つまり、周りで戦ってても中央の巨大な樹にはダメージが入るって事だ。


「レイドらしいと言えばレイドらしいですが、そうなると見えている分が無くなったらどうなるのか、という感じでもありますしね」


 ……にしても、こんなある意味救済措置みたいなギミックがあるって事は、迂闊に私含む特級戦力、特にステータスが高い召喚者プレイヤーや住民があの防壁の残骸みたいなものの向こうに踏み込んでたら、ヤバかったと見るべきだろうな。

 今から試すつもりはさらさらないというか、このモンスターの大群及び大物の出現がそういう理由での反応だったりするかも知れないんだが。

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