第2104話 67枚目:変化の先
「凍て食らう無尽の禍像」の体力バー(下段)が3割を切った瞬間、私達で起こしていた竜巻が一瞬真っ黄色に染まったのはひやっとしたが、無事に特殊行動は乗り切ったようだった。
掲示板を覗き見した限り、エリア外縁部の雨が降ってる場所での戦闘が大変な事になっているようだが、それはまぁ自業自得だし、戦線が崩壊しそうになってる訳でもなさそうなのでさておくとして。
実は、巨大竜巻はまだ継続していたりする。この竜巻がある限り地上からは当然、横穴からも攻撃は出来ない。そして観測班からの報告でも、3割を切ったところから体力バーも動いていない。でも維持している理由はというと。
「疑似モンスターの降ってくる量が跳ね上がった……という事は、この中での発生量が増えたって事ですよね。順当に」
「せやな」
「疑似モンスターが増えるとどうなる?」
「知らんのか。胞子の増えるペースが跳ね上がる」
「下手すれば自爆までして胞子が増える」
「レイドボスが回復技を使うな定期」
という事だ。体力を削れてないというより、回復するのを阻止している感じだな。
ここまでの感じ、疑似モンスターがどれもこれも胞子で出来ているのは間違いないだろう。その割に胞子の塊もしくは供給源である「凍て食らう無尽の禍像」の体力は削れていないが、雑魚召喚は別って事かも知れない。
もしくは、疑似モンスターを出現させるのは本体以外の何かって可能性もあるか。……そうだな。怪獣サイズのアシダカ系の、更に上があっても何もおかしくないな。
「でも攻撃できないと、何も変わらないんだよね? どうするの?」
「降ってくる数が増えたことで若干地上が混戦状態になっているそうです。それを立て直しつつ、更に地下へ横穴を掘っているので、その横穴から攻撃する形になるようですよ」
「まだ掘ってるの?」
まだ掘ってるんだよな。私達がいるこの横穴の後ろでも掘削作業が行われてるぞ。なお掘り出された土は海に繋がってる大穴の埋め立てに使われている。ようやく海側から見て2つ目の壁までが埋められたらしい。
「地味だなぁ……」
「これだけの竜巻を起こしてる時点で地味の対極にいると思うんですよ」
「それはそう」
「やってるのは魔力を流すだけだからそう言えんでもないけど」
「あの竜巻俺らが起こしてるんだよなぁ」
作業的には地味かもしれないが、やってる事自体はだいぶ派手だぞ? サーニャ。体を動かしてないから暇に感じるのかもしれないけど。
しかしこの分だと、更に地下へ繋がる横穴が完成するまではこのままだろうか。まぁ別にそれならそれで構わないんだが。少なくとも「凍て食らう無尽の禍像」の体力回復は阻止出来てる訳だし。
――――ドゴンッッッ!!!
なんて思っていると、突然、ものすごい振動が襲った。横穴の一部が崩れたので物理的なもの、全体が揺れたのでかなり大きい。ギリギリ竜巻を起こすのは維持できたが、何だ今の!?
「この大陸で地震なんて起こる訳がありませんし、原因があるとすれば何をどうしたってレイドボスのせいでしょうけども……!」
「それはそう!」
「司令部地上は!?」
「地上も強度の強い揺れに襲われたそうです! 震源はエリア中央というとこで、外縁部の砦に対する影響は軽微と!」
「まぁ拠点崩れてないなら大丈夫か」
「流石に竜巻がうざくなって顔でも上げたか?」
「この穴掘るだけの大物は身じろぎ一つでも大変だな」
相変わらずの素早さで状況確認。を、している間にも再びの揺れ。まぁ復活レイドボスの「凍て食らう無尽の禍像」が動いたんだろう。それは間違いない。問題は、どういう風に動いたか、だ。
地上に上がってくるならまぁ良し。だが今の揺れが万が一、その一部が地下のマントルに到着し、爆発を起こしたとかだったら笑えない。本体が丸ごと吹っ飛ぶまで、どんどん威力を上げての爆発が続くって事だからな。
……いやまぁ確かに、この大穴を掘り抜ける大きさの相手が地上に出てくる、それだけでも十分大変ではあるんだが。例によって大量の胞子と疑似モンスターをばら撒きながらだろうし。
「ところでこの揺れ、なんかだんだん大きくなってね?」
「思った。あと大きくなるってか近づいてる気がするんだが」
「つまり上がってきてる?」
「だといいよなぁ」
まぁでも、皆で囲んで叩けるって意味だと地上に出てきてくれる方がマシだよなぁ……と思いつつ、ベテラン勢の人達の会話を聞いていた訳だが。
ズガン!!! とすごい音がして……大穴の方から、横穴いっぱいのサイズの爪が、こちらへ叩き込まれた。
いや
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