第2103話 67枚目:対策中

 ちなみに、横穴にいる召喚者プレイヤー勢で大穴一杯の竜巻を起こしていると、当然ながら地上の本隊から攻撃する事は出来ない。その点はどうするのかと聞くと、竜巻を起こしている間は疑似モンスターが大量に降ってくるから、その相手で忙しいと返事があった。それはそうか。

 ついでに地上に居て、ここまでずっと胞子を吹き散らしたり回収したりしている人や精霊さん達をちょっと休ませる事にもなるんだそうだ。うん? 胞子を竜巻で吹き上げるんだから、集めるのは変わらないと思うんだが?

 ……と思ったら、どうやら雨が降ってる中でしか戦えない金属装備の人達が、もっと戦わせろというぐらいにモンスターの数が減っているんだそうだ。うーんこの。司令部も大変だなぁ。


「だとしても数が多くならないか……?」

「まぁ、何とかするんでしょう。雨の中で戦う良い訓練にもなりますし」


 雨の中で動くのは大変だぞ。というのを主に比較的経験不足な人達に教える場にもなっているようだ。まぁ、そうだな。雨の中の野戦は、大変だからな……。しかも地面はむき出しだ。当然酷くぬかるむ。

 流石に、こう、順当に大陸を渡ってきた人なら、主に北国の大陸で、悪天候の中で戦う術は身に着けているらしい。ただその辺を促成栽培的に試練や何やらですっ飛ばしてきた人は、ここで躓いているようだ。

 まぁ、普通は土砂降りの中で動くって事自体が無いからなぁ。全身の装備が水を吸って重くなり、濡れるから体が冷えて、地面の状態以上に自分の体が動かない。あれはキッツイよな。


「……。お嬢。なんか随分実感がこもってるが、そんな環境で直接戦闘した事なんかあったか?」

「ティフォン様やエキドナ様の試練では時々出てきましたからね。後、私自身は直接戦ってませんが、複合神殿を乗っ取られかけた一件では時々そういうステージが出てきたでしょう?」

「あー……あれな。ほとんどは晴れてたけど、確かに途中で雨とか雪とかの場所があったな」


 その辺もちゃんと抜かりなく経験済みだとも。経験しておいた方が動ける、というティフォン様とエキドナ様の方針で、とりあえず一通りの悪条件での戦闘はしているぞ。

 まぁ流石に、溶岩の川の上で燃やすと回復する鳥と戦ったのはキツかったけど。武器使用禁止だったから、水の塊に突っ込ませて纏ってる炎を一瞬消して、その間に殴って仕留めたよ。うっかり高度を下げると全回復するんだもんなぁ。

 私だけではなく、ベテラン勢ならその辺色々な方法で鍛えてきているだろう。少なくとも最低限の空中戦は出来る筈だ。何せ足場が無い/地面に触れてはいけない場所で戦うなんてザラだったし。


「たまにちぃ姫が全部燃やすしな」

「まぁ俺らも燃やすようになったけど」

「竜と蛇の始祖に感謝を」


 アーアーキコエナーイ。


「それはそれとして。竜巻を起こしていますが、相手の体力バー様子は見れるんですか?」

「観測班が問題なく確認しているようです」


 すごいな観測班。そして体力バー自体は順調に黒くなっていっている=体力が削れて行っているようだ。耳を澄ませれば、ギリギリ爆発している音は聞こえているからな。体力バー(下段)が5割を切ってからの行動変化はそのままなんだろう。

 そうでなくては困るんだが、それならどうにか、次の特殊行動も対処できそうだろうか。つまり、大量の胞子追加による急速回復を。竜巻だからな。いくら柱のようなもので邪魔していたところで、完全に塞いでいる訳ではない以上、風が通る隙間自体はある。

 そこにこの竜巻なんだから、少なくとも下の方に溜まっている胞子はいくらかでも吸い上げられているだろう。となれば、流石に完全阻止は無理だろうが、その回復量を大幅に減らすことは出来そうだ。


「まぁそこから更に削らなければいけないのと、残り1割の時に何をしてくるかなんですけどね」

「白熊の時はなんだっけか」

「あれよ。竜巻になったやつ」

「そうだった。あれ? 今俺ら竜巻作ってるが?」

「ま、まぁ、全く同じとは限らんし……」

「知ってるか。極度に乾燥した地域だと、森の木の枝同士が風でぶつかって着火して山火事になるんだぞ」

「あの細いところで同じことが起こるって? 笑えん」

「最悪過ぎて起こりそうっていうのが本当に最悪」


 流石にそれは無いと……無いと、思うんだけどなぁ……。

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