第2101話 67枚目:節目行動
で、そこから割と全力で迎撃した結果どうなったかっていうと。
「案の定特殊行動ではなく行動変化でしたし、落ちた分はともかく壁際に疑似モンスターが残っていたらアウトでしたし、それを抜きにしても本当に厄介極まるという……」
行動変化だったから、結局体力バー(下段)が残り3割になるまで止まらなかったんだよね。あの球体の出現と爆発。あと疑似モンスターの大量出現。
そして実際、体力バーの残りが3割を切ったところで球体の出現と爆発は止まった。……正確には、球体の出現が止まった。爆発はその後もちょっと続いてたからな。残ってる球体は成長と爆発を続けていたんだろう。
ただ。
「見えている範囲の疑似モンスターが残らず爆発して大量の胞子になったという事は、球体から出現して下に落ちていた奴らも爆発したって事でしょうし。それだけ大量の胞子が供給されれば、当然ながら超回復する条件を満たす訳で」
結果として、「凍て食らう無尽の禍像」の体力バー(下段)は、残り6割ちょいのところまで回復した。となると当然再び5割を切ったところから、あの球体の出現、成長と爆発が起こる訳だ。
そして体力が回復したという事は、この「凍て食らう無尽の禍像」の場合はその体積が増えたって事になる。そして今いるこの横穴は、海まで続いていた大穴よりも深い場所にあるので……端的に言うと、塞がれかけた。
中まで入り込んで来ようとするのはエルルとサーニャが阻止したし、阻止する為に砕いた分は私が領域スキルで消したが、これはちょっと大変な事になったな。だってこの間も疑似モンスターが出現してるって事だから。
「下手すればここでずっと足止めを食らって削れなくなりますね。だから、レイドボスが効果の高い回復技を使うなって言うんですよ」
私が言うなって? レイドボスじゃないからな。いくらでも言うが?
「まぁでも、5割を切ってからの行動変化が終わった後は特殊行動だというのが確定しましたからね。そろそろ残り時間も見えてきましたし、出来れば削り切っておきたいところですが……」
しかし真面目にどうしたものかな。もちろん事前に疑似モンスターの数を削っておくのは大事だろう。ただ、下に落ちていった分まではどうしようもない。何故なら下に落ちた分までどうにかしようとすると、その途中にある細い柱みたいなものを全部折らなきゃいけないから。
で。細い柱みたいなものを折ると、大量の胞子が発生するのは変わらない。胞子の大量発生を阻止するために胞子を大量発生させる事になる。阻止する為に阻止したい行動をとらなきゃいけないとか、見本のような本末転倒だ。
ただ、周囲の横穴に移動できる人数には上限がある。もしかしたら横穴そのものは増えているかも知れないが、それでもここから劇的に胞子を排除する動きを増やせる訳ではないだろう。当然、疑似モンスターの撃破にも限界がある。
「司令部より連絡です!」
けどこのまま素直にあるいは地道に削っていくと時間が足りないだろうし。なんて思っていると、司令部の人が連絡を受け取ったらしい。連絡というか次の指示を。お、何か思いついたか司令部。
「レイドボス「凍て食らう無尽の禍像」の下段体力バーが50%となった時点から、合成魔法で巨大な竜巻を起こしてほしいとの事です! また横穴での戦闘に参加している全員が参加する事で魔力の消費を抑え、下段体力バーが30%を切った際の特殊行動まで維持し、回復を目的とする特殊行動を封殺して下さいと!」
ふむ。
つまり、この巨大な穴の直径いっぱいの竜巻を起こし、疑似モンスター及び下に落ちて爆発して発生した胞子までもを強制的に外に追い出してしまおうって訳だな?
まぁそうだな。胞子の密度が高くて困るのは、そこに再生するものがあるからだ。再生するものが無ければ、ただ単に大量の胞子が存在するだけなのだから、片付けられなくもない。
「なるほど理解しました。……しかし、そう来ますかー」
「司令部最近思い切り良くない?」
「それは思った」
「聖地作った辺りからなんか吹っ切れた感」
「あれはちぃ姫じゃなかった?」
え? もしかして私のせいか? そんなバカな。
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