第2099話 67枚目:移動と工夫
さてそこからしばらくは様子を見ながら推定本体へと攻撃を続けていたが、当然ながら手数という意味では地上の本隊の方が上だ。ついでに言えば、推定本体を攻撃すればするほどたくさんの疑似モンスターが突撃してくるので、ほどほどのところで止めておかないと胞子を消すのが大変になる。
で、そうしているうちに地上の方が混乱から立ち直り(あるいは吹き飛ばした色々な物の落下が終わって)、攻撃が飛んでくるようになると、その邪魔になりそうなので攻撃そのものを控える事に。
それでもまぁ、壁を登っていくダンゴムシ(仮)を狙って撃破したり、しれっと壁に生えている筒の束みたいなやつを壊したりしてたんだが……まぁ、暇になってきた訳だな。
「しかし、地上からではそろそろ射程が足りなくなってきたみたいですね……」
「攻撃は続いてるよ?」
「胞子を回収して消す方です。ここまで深いと流石に届かないようですね」
まぁそれでも大きく風は動いているから、胞子が積もって超回復する空間になるとかいう事はないようだが、間に合ってるかと言われると……ちょっとずつ間に合わなくなってる、って感じだろう。
かといって、この大穴は中身である「凍て食らう無尽の禍像」を攻撃すればするほど縁が崩れていくのが分かっている。それはつまり、穴の途中に段差を作って、下方向へ進む為の前線拠点を作れないって事だ。
私たちのいるこの大穴が例外なんだよな。……だからって、あの雨を降らしている拠点から同じように、むしろ更に深いところにまで似たような穴を掘るのはどうかと思うんだが。
「司令部より連絡です! この場における力場の変化は十分行われたの事、攻略中の大穴の反対側へ移動し、そこで領域スキルを再展開しつつ胞子排除の補助を行って下さい、との事です!」
「つまり?」
「私の領域スキルはそのまま、攻撃ではなく気流操作の補助ですね。恐らく胞子を上に吹き上げる方向で動けばいいんでしょう」
「小型の竜巻でも作ればいいのかな?」
「流石にそれは周囲の攻撃まで阻害してしまうので、なしで」
サーニャが聞いて来たので、必要な部分を具体的な言葉にして伝える。それに対する答えがこれだったので、一応止めておいた。流石に竜巻は。さっきのは地上にも警告して、一旦攻撃を止めてもらってからやった事だし。
という訳で移動だ。「異界の不思議な旗」を回収し、砦の地下に続く階段まで移動。そこから地上に戻り、雨が降っている範囲の外側を回り込む形で反対側に向かう。時間がかかるが仕方ない。
で、同じく砦の地下から入れる階段を下って穴に到着。……なるほど、こっちは横に長い長方形型の穴なんだな。大きさは半分以下とはいえ、その方が戦闘はしやすいから妥当か。
「まぁ領域スキルの展開範囲は同じなんですけど」
「負荷の方は大丈夫なのか?」
「穴の大きさが小さくなった分、胞子の量は絶対に減りますからね。むしろさっきより楽です」
それに移動してからは、こちらに吸い込むんじゃなくて、風を送り出す方だからな。更に胞子の量は減っている。……だから、巨人用かっていうサイズの団扇でばさばさ扇いでるのはつっこまないからな。横穴の天井にジェットファンの取り付けを始めた一団もだ。
「ねぇ姫さん」
「風を送って胞子を吹き上げる、という意味では有効ですからね」
「でも姫さん」
「あの送風機も恐らく魔法が動力ですし、たぶん起こした風を増幅する方向で、魔法での強化が入ってます」
「うん。それは分かるんだけどさ」
「なんでこうも物理よりなのかは私に聞かないで下さい」
「いやそうじゃなくて。何でわざわざ小さいものを大きくして使ってるの?」
「……小さくても効果的なのだから、大きくすればもっと効果がある筈だからですかね……」
「そっかー」
サーニャが納得しちゃったじゃないか。いいのかこれで。
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