第2098話 67枚目:中盤突破

 やってやったぜ。


「すごい事になったなー」

「見てこれ中継動画」

「わぁ穴が奥まですっきり見えてら」

「周りは吹っ飛ばされて落ちてきたあれこれの対処で忙しそうだけどな」

「あ、縁が崩れた」

「まぁそりゃこれだけ一気に吹き飛ばせば……」


 風の精霊さんにも協力してもらい、地上の本隊へ警告を入れてから、座標指定で巨大竜巻を発生させたら、そういう事になった。……まぁ、ベテラン勢が揃ってる上に、私とエルルとサーニャが参加してたからな。こうもなるだろう。

 もちろん(主にベテラン勢の)魔力の回復を待ちつつ様子を見ている間にも再び胞子は湧いて出ているし、あの兵器珊瑚みたいな奴の下にあった、地上部分と同じ構造のある場所からは司令部の人曰く疑似モンスターが出現している。そして動ける奴は壁を登って行ってるので、その内地上での戦闘は元に戻るだろう。

 なお、あの兵器珊瑚みたいな奴を吹っ飛ばしたことで最前線がこの横穴よりも下になったのか、壁を登ってくる一部はこちらへ来るようになったのだが……まぁそうだな。エルルとサーニャがいて相手になる訳が無い。


「さて。相手の残り体力を参考に様子を見つつ、地道に攻撃していきましょうか。構造が同じという事は、攻撃の仕方も同じで良い筈ですよね?」


 一応司令部の人を振り返って確認したが、頷きが返って来たので同じでいいらしい。つまり、地道にあの細い柱みたいな部分をポキポキ折るって事だな。

 もちろん「凍て食らう無尽の禍像」の体力バーは、下段がもうすぐ半分を切りそう、というところだ。体力バーが5割を切ったら何か特殊行動をしてくるだろうし、それには十分注意しないといけない。

 ……オリジナルの事を考えるに、回復技を使う可能性が高いからな。それでなくても深い穴の中に遠距離で攻撃するって形になるから戦い辛いのに、ここで削り切れずに残り体力5割の境界線を反復横跳びするっていうのは避けたい。


「一度にたくさん球体を破裂させると、最悪さっきの大物が復活しますからねー」

「あれは勘弁だなぁ」

「胞子削りとしては有益だったけどな」

「じゃ復活したらお前1人であれ全部迎撃するって事で」

「すまんかった無理」


 なお私も出来るかどうか自信が無い。つまり無理ゲーって事だな。胞子の減り方がすごかったから、有益って言いたくなるのも分かるけど。

 それはともかく、横穴から攻撃開始だ。もちろん柱を折ったらその先の球体が爆発するんだが、地上からも胞子を回収してくれるので、とりあえずは大丈夫だろう。

 柱を折って破裂させたら、出てくるのは胞子だけだからな。その量が問題になっていたが、ここまで来たら回収というか換気の方が早い。


「土砂の撤去でそこそこ時間がかかりましたし、できればここで仕留めておきたいんですよね。それで相手が回復したら意味無いんですけど」

「えっあれ回復するの姫さん」

「胞子の密度が一定以上になったら回復する、っていうのは分かってますからね。地上に出てた分が元通りになったのは見たでしょう」

「あー、そっかぁ……」


 まぁ、あれだけ動かない状態で胞子をばら撒く疑似モンスター、筒の束みたいなやつと冬虫夏草モデルの噴水みたいなやつが地下に落ちてる以上、その辺りは常にその密度になってる可能性が高いんだけど。

 ……あれ? という事はまさか、今までも推定胞子製の疑似モンスターってやつが胞子に埋もれてたら攻撃を受け付けなかった理由も、それか?

 一定以上の密度って事は、当然みっしりと降り積もっている状態はそこに該当する。だから完全に全体を出さないと、超回復する状態にある部分を無くさないと、攻撃が通らなかった……正しくは、攻撃が通ったように見えなかった?


「……。とりあえずカバーさんにメールしておきましょう」


 まぁ司令部ならとっくに気付いてるかもしれないんだけどな。それにそれが分かったからといって、やる事が変わる訳じゃないし。

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