第2068話 67枚目:理由と経緯
人間、本当に心底驚いた時は、息をのんで固まるらしい。
と、いうのは知っていたし、実際何度か見た事はあるが、どうやら私自身も例外ではなかったようだ。何せこの状況、このタイミングで、
だが。こんな時こそ高いステータスによるゴリ押しだ。吸った息をそのまま言葉に、ボックス様への祝詞を。同時に旗槍を自分に立てかける方向に手放し、メニューの意識展開で腕装備を解除――
「 」
そしてその一瞬見えたメニュー。開きっぱなしだったオートマップに貼り付けられたメモの1つが更新されていて、そこに『東拠点における爆発は予定通り』と書かれているのが見えた。
改めて思考が止まるが、今このタイミング、それこそエルルが反応して私を抱えて大陸を脱出するより先って事は。
「っ、司令部の予定通りだそうです!!」
「はっ!?」
「えっ!?」
祝詞に変えかけた息を、がっ、と2人同時に私を抱えたエルルとサーニャに伝える言葉に変えて吐き出す。そして、その言葉を聞いて止まった2人に、腕装備を着けなおして旗槍を掴みつつオートマップのメモを見せた。
「…………っの……!!!」
「流石に今回ばかりは誰だい計画したのは!!?」
それは流石に予想外だったようというか、流石に小さな火花1つで大陸に穴が開くほどの爆発が起こると理解していたエルルとサーニャの脱力はすごかったが、うん。私も同意見だよ。誰だよ。もっと言うなら、一発殴らせろ。
だがまぁすぐにモンスターの迎撃は始めていたので、ステータスの暴力による高速行動だったから、戦況的には大差ないだろう。しかし、何がどうなってそんな、この状況で爆発が起こるような予定が出来たんだ。
とりあえず、その辺の情報を求めて掲示板を巡る。どこもかしこも阿鼻叫喚になり、しかし爆発が起こらない事を認識して困惑している。まぁ、だろうな。
「と、情報が来ましたか」
大体全体の流れが困惑と立て直しの方に向かったところで、司令部が更新する全体連絡用スレッドに新しい書き込みがあった。
相変わらず端的に分かりやすくまとめられた文章でもそこそこの行数があったその内容は、やはりさっきの爆発に至った経緯の説明だった。細かい時間や動きを更にざっくり略すと、どうやらやはり邪神の信徒こと『バッドエンド』による襲撃があったようだ。
最初からこの拠点一点狙いだったように周到な用意をしていたらしく、一度は完全に拠点を奪われたらしい。そしてその直後から雨が降り始めたので、やはり儀式場を乗っ取られたようだ。
ただ、司令部も素直にそのまま撤退する訳がない。どうせ一度雨が降ったのだからそれ以上は何度降っても同じことだと、邪神由来の雨雲に、別の方法による雨雲を「被せた」らしい。
そして大量のモンスターの発生と引き換えに、拠点周囲をぐしょ濡れにした上で一度完全に胞子を排除した。その上で汚染の問題もあるし、儀式場の破壊も必要だし、こうなったら中にいる『バッドエンド』の構成員を捕まえるよりは確実に仕留めた方がいい、って判断になったらしくて。
上空から、神罰代表の雷を落とすと同時に。地上から拠点を囲んだ上で、容赦も遠慮も無しの最大火力を叩き込んだんだそうだ。
……うん。つまり、その落雷を含めた攻撃の結果が、あの爆発音、って事だったらしい。なるほど?
「まぁ、確かに、欲を出して捕まえようとして相手の罠に嵌るより、確実に仕留める方がいいでしょうし……ついでにその拠点を、儀式場ごと綺麗さっぱり吹き飛ばしてしまえば、除染の手間が無くなるでしょうし……」
分からなくはない。筋は通っているし、理解できなくはない。
が。
「本当に司令部、最近思いきりが良すぎませんか」
大丈夫か。復活レイドボスによるレイドボスラッシュで地味に疲れとストレスが溜まってるとかなんじゃないのか。
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