第2067話 67枚目:対処中

 さてそこから、ログイン時間が半分を切るまではモンスターの群れ及び胞子流出への対処に時間が費やされた。もちろんこの間もエリア中央に向かおうとした人はいるだろうが、恐らく降雨魔法はキャンセルされなかったのだろう。モンスターの群れが途切れる様子は無かった。

 最悪、キャンセルされていても追加されていた。あるいは勝手に再起動される形で儀式場がどこかに設置されていたっていう可能性もある。司令部もそういう可能性を探しているだろうが、東側の拠点がどうなったかって情報が回ってこない。これが分からない。

 拠点として使えなくなって放棄された、あるいは全滅したとかなら、それはそれで情報が回ってくるだろう。それに、あそこも領域スキルを強化する儀式場を設置して、念の為に「異界の不思議な旗」を使っていた筈だ。領域スキルの属性でもめている場合じゃないし、やっぱり大神の領域になるっていうのは大きいから。


「で、その情報が回ってこないっていうのは……」


 領域スキル同士の相性が無視される、と言っても、秩序か中立に属する神の領域スキルが展開されている状態なら、混沌属性の神を信仰している相手は動きにくくなる筈だ。少なくともステータスダウンは入る。そして相性が無視される以上、領域スキルで防ぐ事も出来ない。

 だから、動ける筈がないし、細工が出来る訳もない。そしてもちろん、拠点としての稼働が続いているなら、それはそれで生存確認という形で情報が回ってくるだろう。

 と、言う事は。


「……よくて、今も内部で戦闘中ってところでしょうか」

「どうした?」

「東の拠点に関する情報が入ってきません。私に対して情報が封鎖されている可能性もありますが、その必要性も思いつきません」

「……。なるほど、邪神の信徒が乗っ取りをかけてる可能性があるって事か」

「えぇ。そしてよくて戦闘中であり、悪ければとっくに手遅れです」


 具体的には、降雨魔法が使われた時点で。魔法というか、拠点が乗っ取られていた場合は雨を降らせる儀式なのだろう。雨を司る神は、あの神話にもいるからな。

 ……まぁその雨も、洪水だったり嵐だったり氾濫だったりと、あちらはあちらで派手かつ荒っぽい逸話が大体の場合はセットになっているんだが。つまり。


「たぶん、時間経過とともに雨の規模が上がっていって、災害級まで規模が大きくなると思うんですよ」

「まだ胞子が残ってる上に追加される状態でか?」

「まだまだ胞子が追加され続ける状態で、です」


 早めに叩いておかないと、致命的な事になりそう、って事だ。何せ、そうやって規模が上がって被害が出たところを打倒して平和を取り戻す神話だからな。元ネタが。

 ただし今の状態で相手の規模が上がり切るのを待ってはいられない。というか、上がり切られると対処できない。だからその前に何とかしないといけない訳だが……物量っていうのは大きいから……。

 まぁ最悪、この南側の胞子対策を他の召喚者プレイヤーを集めて、私が領域スキルを展開したままエルルとサーニャを連れて殴りに行けばどうにかなるとは思うんだが。洪水で私に害を成せると思うなよ。何度か言っているが、私はちゃんとエキドナ様も信仰しているんだから。


「むしろ私が行けば、そのまま片っ端から水そのものを支配における可能性までありますからね」

「お嬢?」

「私が行けば決着はすぐにつくという話ですが、今はこの場の防衛が優先です」


 なんかエルルからもの言いたげな視線を貰ったが、それはともかく。私に動くように連絡が来ないって事は、司令部は別口で何とかするつもりだって事だろう。たぶん。

 では実際どうするのかは分からないが。とか思っていると。



 東の方から。

 ――ドォン!!! と、爆発音が、響いてきた。

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