第1934話 64枚目:実行準備

 パストダウンさんからも司令部に連絡が入っていたらしく、準備はさくさく進んだ。そう言えば穴って攻撃したら塞がるんじゃないの? と思ったが、どうやら地盤崩落が起きた場所はそのままになるらしい。

 当然本体に繋がる地下の空洞もそのままのようで、司令部と一部のクランはその空洞を利用して、地下に広がる交通網を作ろうとしていたらしい。地下鉄みたいな感じで。

 ただ今回、計画段階でティフォン様が使う事に決めたので、神には勝てないって事で計画はそのまま立ち消えたらしい。まぁ確かに地下の道として使おうにも、元凶である「伸び拡がる模造の空禍」を倒さないとどうしようもないからな。


「あとエキドナ様の神器もセットって事は、そのまま地下水が通る洞窟になるってことでもあるでしょうし」

「計画は温泉地開発を目的としたものに変更されたようですよ」

「地下を諦めたら諦めたで、ただでは起きませんね……」


 まぁそういう計画もあったらしく、動きは早かった。実働はベテラン勢の中でも古馴染みに限られていたが、司令部の中の人も一部動いたって事で、あっという間に地盤崩落が起きて出来た穴が1つ、空っぽになったようだ。

 ただ空っぽにしただけでは本体に繋がる穴からお代わりが来るんだが、その穴に繋がる別の穴でも同じ勢いで液体釣りをした為、通路も綺麗に空になっている。

 後は「奪い返す」条件として、私が穴の中心で領域スキルを全力展開してしばらく待機していればいい。力場的除染だな。


「で、俺が呼び戻されるって事は、またなんかやったな?」

「決めつけないでくれませんか。ティフォン様からの託宣ですよ」

「…………。始祖から?」

「はい。「第一候補」経由で」


 上もそうだが地下も可能な限り範囲を広げて領域スキルを維持していると、エルルが戻って来た。忙しい筈なんだが、どうやら私の護衛という方を優先してもらったようだ。

 なおエルルが呼び戻される=竜族部隊の人達も戻ってくるって事なので、たぶん今、この穴の周囲にはモンスターの群れが来ているんだろう。まぁそうだな。私だって邪魔をする。何をするかは分からなくても、絶対碌な事じゃないのは分かるから。

 ざっくりと事情を説明すると、エルルは頭が痛そうに額を押さえてしまった。だが事実だ。なのでそのまま、あの宝珠型の神器を使うというところまで説明しておく。


「……あぁ、あれか。あれな。あの地形が変わる奴……そうか、この大陸ならその辺の問題が全部解決するのか」

「そうなんですよね。それに、オリジナルの時にもちゃんとトドメを刺す為にティフォン様のお力を貸していただきましたし。そこから更に厄介になっているので、やはり神の力が必要だったようです」

「それはそうかも知れないが……」


 ちなみにあの後ももうちょっと喋っていた「第一候補」によると、地母神系の神様の聖地が出来ると、全体的にこっちの神々の力が通りやすくなるんだってさ。そういう意味でもやってくれれば助かる、って話だったらしい。

 というか、だから御使族の人達からのオッケーが出たんだろうな。何せ聖地を作る神器だ。本来ならもっと使いどころを見極めて、皆が納得する形と場所を選ぶはずだったんだろう。

 まぁ今回は急な話だったとはいえ、少なくとも皆納得はしている。むしろ現時点ではこれ以上なく良いタイミングだ。当然、本神からの託宣があったっていうのも大きいだろうけど。


「……。お嬢」

「何でしょう」

「今思ったが、神器を持ってる事はともかく、使う事は連絡したのか?」

「カバーさんがその辺全部連絡はしてくれてる筈ですよ」


 誰にかって言うと、まぁ、竜皇様おとうさまだな。ほら、一応竜族の始祖から貰って、竜族の始祖の聖地を作る神器だから。竜族の最高権力者は、ね。

 神器を貰ったって言うのは既に報告してるし、それを使う(使えって託宣があった)事はカバーさんが連絡してくれている。カバーさんだけだと流石にあれだから、ニーアさんも一緒か、それこそニーアさんにお任せしたかも知れないんだけど。

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