第1715話 59枚目:大物対処

 案の定、というべきか、巨大化した棒人間もとい使い魔を倒すと、「素材箱」というアイテムが手に入ったらしい。インベントリに入るのではなくその場に山積みの形で出現したので、ちょっと焦ったが。

 なおその使い道だが、実質引換券だというのは合っていたものの、任意ではなくガチャだった。中身は特殊な素材で確定なのだが、その内の何がどれだけ出て来るかはランダムだったのだ。

 ただ、あの巨大化した使い魔は日付変更線直後から出現し続けているらしく、どうやら1%以下の確率だが、「神々の塗料」が出てくることもあるようなので、召喚者プレイヤーの動きとしては積極的に倒して回る感じになっているとの事。


「その割に状況が切迫しているようですが、そんなに厄介なんですか、こいつ」

「俺らはあっさり倒せるが、あれかなり硬いぞ」

「あぁなるほど、かなり気合を入れた攻撃でないとそもそも通らないんですね」

「それに、かなりしぶとい上に回復するから、長引きやすいんだ」


 防御力、いや、たぶん状態異常の耐性もだな。恐らくは「均し富める模造の魔臼」と同じパターンで、体力そのものも多いんだろう。数が出てくる敵にそんな体力持たせるんじゃねぇという叫びが聞こえてくるぐらいに。

 しかもこいつら、人口密集地……大きな街へと移動していくのが基本で、その進路の近くに小さな村や町があったらついでに襲撃していくというパターンで動いているらしい。なおかつ、出現するのは未挑戦状態の野良ダンジョンからだ。(検証班調べ)

 いつの間にか入っていた調整で、野良ダンジョンの出現位置は人里周辺となっている。まぁあんまり奥地に出現しても攻略できないからね。そうでなければ、野良ダンジョンが大量出現して、ゲテモノピエロがカウントを加速させた、あの年末は乗り越えられなかったし。


「それにしても、再び野良ダンジョンの出現数が上がって来たという事は、また空間の歪みが溢れてきてるという事なんでしょうか」

「あの神殿の建設も進んでる筈なんだがな?」

「溢れてなければ、神殿に溜め込んでいる空間の歪みへ干渉されて引き出されてるって事なんですけど」

「……最悪だが、否定できないのか」


 否定出来ないんだよな。今までの散々にしてやられたあれこれを考えると。何せ戦略を考えられる頭がある敵だ。リアル2年近い攻防で、空間の歪みの扱いや空間への干渉の仕方も学習して、言い換えれば腕を上げているだろうし。

 そもそも、神々の油断もあったとはいえ、神殿に溜め込まれている空間の歪みそのものへの干渉は以前にも行われている。今回それに関するアナウンスや説明は無かったが、たぶん干渉されているんだろう。

 それが何故表に出ていないかと言えば、恐らく、神々自身への影響、及び、神殿を介して届けられる祈りに影響が無いからだ。「モンスターの『王』」は学習する。どこまでなら手を出しても反撃されないかを考えて、手加減している可能性は高い。


「ダメなんですけどね。空間の歪みだけとはいえ、空間的に神殿へ干渉されている時点で」

「まぁそれはそうだな」

「絶対にダメなんですけどね。その手加減がどこぞの信徒の入れ知恵である可能性まで含めると」

「あー……」


 本当にな。ダメなんだけどな。ダメな筈なんだけどな。私だって流石にそれは無いと思いたいんだけどな。万が一に備えるとかならともかく、可能性がある程度以上あるって方向で想定はしたくないんだけどな。


「あの異空間の事で、確実に、絶対、どう考えても、がっつりしっかり「モンスターの『王』」と手を組んで空間に干渉して協力体制になっている、という事が確定しましたから……」

「……そうだな。専用の空間って何だと思ったが、空間に干渉出来る相手は限られるからな……」


 まぁ確定したって事で、御使族の方でも何か動いているみたいなんだけど。「世界の敵」への協力は、その神が邪神である事とはまた別の方向で問題だから。

 ……最悪、神話ごと「世界の敵」認定にされるんじゃないかな。もちろん最悪であって、恐らく証拠が足りないだろうし、ゲテモノピエロも流石にそれは回避する方向で動くだろうけど。

 でも、そうなったら“破滅の神々”の信者って時点で少なくとも大神の加護は剥奪できると思うんだよなー。つまり、全員揃って一括強制BANだ。実行されればこれほど楽な事は無い。

 ……実行されればであって、たぶん諸事情で無理なんだろうけど。

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