第1714話 59枚目:調整と追加

 まぁそうは言っても世界は広い。その内『アナンシの壺』のサイトに掲載されている世界地図とリンクする形で、特殊な素材が採れる場所の一覧が発表された。混んでいる時間帯もついている親切仕様だ。

 それに水曜日の昼間に短いメンテナンスが入り、ダンジョン内の地形でも通常空間と同じ素材が手に入るようになったらしい。もちろんダンジョン内の地形限定の素材も手に入るから、確率としては低いようだが。

 後は、ダンジョンの難易度が高い程特殊な素材が手に入る数が増えるようになった。もちろんその分必要なスキルのレベルも高くなっているようだが、これは助かる。


「縦の繋がりを増やす、という意味だとあれですけど、住み分けは出来た方が色々トラブルは少なくて済みますからね……」


 ……ただ、メンテナンス後にイベントページを確認してみたところ、妙な一文が増えてたんだよな。「素材箱はそのままでは納品対象になりません」っていう。何、素材箱って。

 一応掲示板を巡ったり『アナンシの壺』のイベント関係ページを確認してみたりしたが、そんなアイテムは確認されていない。巡った掲示板もざわついてたから、たぶん未発見アイテムだ。

 で。月曜日スタートのイベントで、水曜日の昼にメンテナンスが入った。そして特殊な素材の入手方法に調整が入ったと同時にこの未発見アイテムが追加された、って事は。


「エルルー」

「なんだ、お嬢」

「全員に警戒態勢を取るように通達して下さい。たぶん近々大物が出現します」

「………………分かった」


 結構間があったな。確かに唐突な事を言ってるとは思うけど。でもたぶん間違ってないと思うんだよ。だってこのイベントは、土日に終わりが来るんだから。つまり召喚者プレイヤーの稼働率が高いタイミングだ。

 って事は、大物が出現して特殊なアイテムを落とす可能性は、まぁ高いんじゃないかなーと。そのままでは納品対象にはならない、って事は、任意の素材が手に入る感じの、引換券的なものだろうし。

 ただなぁ……今までのパターン的に、そんな良い物を、大神運営が素直にドロップさせてくれるかっていうとなぁ……。




 一応カバーさんにも推測を伝え、司令部でもその可能性に思い至って大規模戦闘準備をしているというのを聞いて、私自身も通常空間ではなく、野良ダンジョンやボックス様の試練を往復して素材を集めている内に、土曜日になった。

 当然週末で大学は休みなので、午前中からログインしている訳だが。


「これは酷い」

「呑気に言ってる場合か。ここだけじゃなくて、世界中でこの調子だぞ」

「重ねて酷いですね。とりあえず動きます。どこが救援の最優先ですか?」


 うん。まぁ。その。なんというか……あの棒人間みたいな使い魔がいたじゃないか。うちの島でも霊獣達に混ざって働いてるけど。そう、頭と胴体が丸で、手足が棒になってるタイプの棒人間。もとい人工使い魔。

 争奪戦になっただけあって、割と街の中でも見る事が出来る程度にあちこちに居たらしいんだ。まぁ小人族とか物質系種族とか霊体種族とかいるから、だいぶ人外の種族に慣れてきていた一般人間種族の人達も普通に受け入れてたらしいんだよね。

 そして現在、うちのクランハウスと、エルルが言うには世界中の、たぶん拠点、街とか神殿とかに、だな。



 それを、巨人サイズにした奴が、襲撃をかけてきてるんだ。



 もちろんうちにいる、私やフライリーさん、マリー、カバーさんなんかが主になっている使い魔とは別に。つーか顔の所に歯車模様が浮かび上がってたり、顔部分がドロッとしてる時点で大体相手は分かる。

 何で今この場所にいるのかはカバーさんを含む元『本の虫』組が調べてくれているだろうし、バックストーリー的にはたぶん相手側からの妨害だろう。空間への干渉能力を持つんだ。大体何やってもおかしくないからな。

 『アウセラー・クローネ』の拠点は島の数が増えたし、その時にがっつり要塞化して防御力を上げている。だから、問題なく撃退自体は出来ているんだが、他の場所はそうもいかないだろうからな。……それにしても斜め上だけど。巨人サイズの棒人間ってなんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る