第1713話 59枚目:イベント開始

 月曜日スタートでイベントが始まり、今度はどこかに納品する為の神殿が出現する訳ではなく、メニューのイベントページから納品できる仕様だと知ってちょっと安心した。

 そして今度は全体での納品対象が存在せず、個人用とクラン用に分かれているだけのようだ。なので、生産力が追いつく限り一気に納品することが出来る。

 それに今度は、とりあえず現在分かっている範囲では、という注釈がつくものの、そこまで納品アイテムの作成難易度は上がらないようだ。その代わり、納品に必要な数はどんどん上がっていくようだが。


「数が増えるだけなら何も問題ないというか、倉庫を圧迫する在庫を有効利用する大チャンスなんですよね」

「なんだかんだと色々放り込んでたっすからねぇ……」


 例の使い魔も参戦してくれているし、霊獣や属性精の子達も随分と増えている。だからガンガン採取して納品していくぞー、と、イベント初日から気合を入れていたのだが。

 ……今年の6月季節イベントのお知らせが、イベント開始と共に届いてたんだよな。そしてその内容は、月イベントの期間中は、ちょっと特殊な素材が採れるようになる事らしい。

 ただその採取条件っていうのが、各生産スキルとそれに対応する生産施設、あるいは装備を使う事で、しかもどうやら、誰のものでもない草原や森とかもそこ独自の特殊な素材が採れるらしく。なおかつ。


「その特殊な素材を含めないと納品対象にならないって言うのは普通に酷いと思いますが」

「まぁベテランがあんまりにも有利になるっすからね、あのままだと。分からんでもないすよ。同じくらい酷ぇと思うっすけど!」


 という事で、割と世界各地を走り回る事になった。試練ダンジョンでの再現地形と野良ダンジョン内の同じ地形と通常空間の地形で採れるものが違うって辺り、本当に徹底してるんだよなぁ。

 たぶん先月のイベントで横の繋がりを作ったから、ここで先輩後輩って意味の縦の繋がりを作っておこう、って感じなんだろうが、普通に場所の取り合いになってる。まぁそりゃそうだよな、としか思えないんだよなぁ。

 一応森がハゲになったり、草原が荒れ地になったり、砂漠に大穴が空いたりはしなくても特殊な素材は手に入るみたいなんだが、何より問題は、その特殊な素材が手に入る地形に、「市街地」が含まれてるって事だ。


「お陰で、ただ置いてあったり物入れになっていたりする木箱や壺が叩き割られる事例や、民家への不法侵入が山ほど起きているとか。これだから運営は」

「フリアド慣れしてるプレイヤーならともかく、新人さんにそんな行動指針示しちゃダメっすよ」


 なお「市街地」での特殊な素材の手に入れ方の正解は、井戸から水を汲み上げるか普通に買い物する事だ。井戸はともかく、買い物はどうなってるんだろうな? なんかドロップアイテムよろしく、インベントリに直接素材が入るみたいなんだけど。

 それに加えて、神殿やお城と言った部外者立ち入り禁止の場所にも何かあるんじゃないかと勘繰り、無理矢理押し入ろうとした召喚者プレイヤーも結構いるらしい。もちろん新人が全員そうという訳じゃないんだが、こう、悪目立ちする奴はどうしてもいるよねというか。

 ちなみに、竜都で同じことをしようとした奴もいたようだし、余所のクランホームに突撃かました奴もいたらしい。もちろん捕まって相応の罰を受けたようだが。


「なんだかまた大きくふるいにかけられている感じがありますが、せめて一回で懲りてくれることを祈りましょう」

「今はあの動画とかまとめサイトとかも充実してる筈っすからね。調べようと思えばいくらでも調べられる筈っすから、ちゃんと活用して欲しいっす」


 それな。もちろん、ちゃんと調べて来たり、先達となる召喚者プレイヤーの助言を素直に聞いたり、周りを見て落ち着いて行動したりする召喚者プレイヤーの方が多いのは分かっている。分かっているが、うん。

 ……この辺りの海で遭難してる船を見つけて助けたら、それが中堅に手が届くかどうかっていう召喚者プレイヤーで、『アウセラー・クローネうちのクラン』のクランホームに突撃しようとしたっていう実例を見ちゃったりしてるからなぁ。

 どこまでが普通に考え無しで、どこからがゲテモノピエロの細工か分からないのもあって、神経を使わざるを得ないんだよ。

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