第1712話 59枚目:イベントのお知らせ

 今回のレイドボス「均し富める模造の魔臼」は、常にカウンターが発動する状態の相手だった。だから特級戦力としてまとまった火力を叩き込む事は出来ず、また根っこと持ち手は別体力だったことから、最大ダメージランキング及び総合ダメージランキングの1位は逃す事となった。

 ただ体力そのものが莫大だった上に途中で回復したし、モンスターとのダメージレースになっていたので、その実割と誤差だったらしい。なお、ダメージレースは召喚者プレイヤー側が勝利した。ちゃんとレイドボス討伐成功のシステムメールに「特殊処理は発生しません」って書いてあったから大丈夫だ。

 ……ランキング1位をゲテモノピエロに持って行かれてないかが若干不安だったが、たぶん大丈夫だろう。たぶん。恐らく。


「で、続けて次のイベントのお知らせが来ている訳ですが」

『報酬に続けて、露骨なのですわ』

「まぁ、ある意味分かりやすいっちゃ分かりやすいんすよねぇ……」


 そういう事なんだよな。

 現在月が替わって、土日を挟んだ月曜日。そのタイミングで届いたイベントのお知らせは、恐らく分類としては探索になるんだろう。なるんだろうが、ある意味とても「分かりやすい」内容だった。

 まぁその、色々ツッコミどころはあるんだが……とりあえず、バックストーリーを確認しよう。



 世界から隔離され、大神が抱え封じた傷の1つ。偶然によって表に出てきたそれを、神々はどうにか奪われる事も利用される事も無く、召喚者の働きにより封じ直す事に成功した。

 しかし、その欠片があちらの手に渡ってしまう事は防げなかった。召喚者の働きが目覚ましかった為に、その欠片は想定していたよりも限定されたものにはなったが、それでも、ただでさえ厄介な侵略者が更なる力を得た、という事には変わりない。

 そしてその直後から、すっかり侵略者側の世界と化してしまった空間が、今までと違う動きを見せるようになった。神々は十分に警戒しつつ話し合いの場を設け、考えられる限りの想定を並べ、相談し、知恵を出し合い、対策として出来そうなことを、召喚者へ託宣という形で伝えるのだった。



 うん。まぁ。そりゃな。「富める欠片」や「富める種粒」がある程度回収されてるのは分かってた。……想定していたよりも限定されたっていうのはあれだな? たぶん「生命樹の木材」だな? 気付いて良かった。マジで。

 で。バックストーリーに出てきた「今までと違う動きを見せるようになった」空間っていうのが、恐らく最大レベル30のオープン型野良ダンジョンの東側なんだろう。イベントが終わったのに挑戦できないって事で、ちょっと掲示板がざわついてたし。

 そして問題は、6月イベントとなるその内容が何かって話なんだが。


「ここでクエスト型の納品イベントとかどう考えても嫌な予感しかしないんですが」

「今まではそこにある空間異常に干渉してダンジョン化してたっすけど、今度は喧嘩しながら作る事になるんすかね」

『ありえますわね。そしてそれに使う材料を用意する、と。……だとすると、少々時期が早いような気もするのですけれど』

「どうせ直前は相手の妨害で、戦闘か探索する事になるんでしょう」


 あれだな。竜都の大陸での7月イベント。マリーの言う通り1ヵ月早いんだが、今回は「モンスターの『王』」そのものがその特殊能力や立地、何より頭の回転で、数段厄介になっている。

 恐らく、形を変えての納品は続くと思う。クエスト形式じゃなくて、それこそ空間の歪みを少しでも消費する為に、試練・野良ダンジョンを周回する事が推奨されるとか。

 そしてそこで蓄えた物資と力で、「モンスターの『王』」2体同時相手に、空間制御勝負を正面から挑む事になるんだろう。神々が。そしてその合間を縫って、召喚者プレイヤーが「モンスターの『王』」を倒しに行く。たぶんこうなる。


召喚者プレイヤーの人数も増えていますし、イベント報酬で戦闘力の強化もされましたし、何より例の使い魔で、少なくとも素材の回収効率は上がっている筈ですからね……」

「あのでっかい種とセットで、素材の生産準備は整ってるも同然っすもんね。結局最終的にどれだけ行き渡ったのか分からんすけど」

『後は知識とスキルと慣れの問題ですわね。……本当にそれで済むのかどうかは別ですけれど』


 それはもう、無駄になる覚悟をした上で、思いつく限りの準備と警戒をしておくしかないな。あの便利グッズ、ゲテモノピエロ達も専用ステージでしっかり手に入れてるだろうし。

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