第1711話 59枚目:イベント報酬

 適切な手段ってなんだ、と思ったが、どうやら正面から顔を合わせた状態で魔力を流す事だったらしい。正面ってどっちだ、という外見をしていたが、とりあえず種を抱えている方が正面のようだ。

 ただそうやって大人しくさせるとモンスターが寄ってこなくなるので、「第二候補」は早々に捕まえる役に交代を申し出てきた。うん。アイテムにも使い魔自体にも興味が無いのは知ってた。

 面白いのは、この人工使い魔はテイム枠を取らないって事だ。まぁその分やられたらというか耐久度が0になったらアウトなんだろうが、戦闘に巻き込まなきゃいい話だろうし。


「というかですね、「第二候補」」

「んむ?」

「道具の保全が本来の役割って書いてますし、例えばあなたのところだと、訓練所の的とかカカシとかの手入れをしてくれるのでは?」

「……なるほどの?」


 という事で、まぁ、人数の多いステージでは結構取り合いになっていたようだが、私達は関係無いからな。もちろんエルルとサーニャにも確保をお願いしておいた。

 その後ログアウトする前に研究所に立ち寄って相談したところ、どうやら基本は彼らも知っていたようで、少し解析したら持ち主の再登録が出来るようになるとの事だった。これで暴れる状態のまま連れて帰らなくてよくなった。

 一度に出現する数こそ少ないものの、ボーナスステージとなったイベント空間には常に出現していたらしく、最終日まで盛況だったようだ。ちなみにレイドボスを倒した後の資材集積場には、使役状態になった人工使い魔がいて、回収できたとの事。


「まぁその場合は、歯車かスライム部分を取り除いてから再登録する必要があるみたいですけど」

「それはそうっすね。どう考えてもモンスターに使役されてる状態っすし」

『種は見つからなかったんですの?』

「種が見つかったって話は聞いてないんですよね」

「明らかに回収済みっすね……」


 ……正直種の方がヤバいとおもうんだが、まぁ、これはもうどうしようもない。増やせないって書いてあるんだから大丈夫だろう。たぶん。

 霊獣や属性精達との相性も悪くないらしい人工使い魔は、せっせと畑や果樹園で働いている。動き続けると耐久度は減っていくようだが、どうやら魔力の込められたものを食べる事で回復することが出来るらしい。なので、普通にご飯をあげればいいようだ。

 種については保留である。というか、検証班の情報待ちだ。何だろうな。欲しいものが実るって。


「金貨や宝石が実る時点でファンタジーだなとは思いますが、まさか生き物まで許容範囲だとは思いませんでしたね……」

「あー、あれっすか。何かやけにデカくなったやつから、めっちゃ立派な馬が出てきたっていう」

『とはいえ、流石に限度はある筈ですわよ? むしろ無ければ改めて運営の正気を疑わなければなりませんわね』


 それなんだよなぁ。たぶん恐らく今の所、植えた土地の状態とか、植えた人のステータスとかスキル構成とか、後は信仰値とか、そういうのが総合して影響してるんじゃないかって話らしいんだが、まだ確定はしていない。種の方にも隠しステータスがある感じがするし。

 水曜日に何とかレイドボスを倒すことが出来て、残り2日を走り抜けた事で、エルルとサーニャの分も合わせると私は結構な数の種を持っている。ただ、植える本人の影響があるとなると、私では検証の手伝いは出来なさそうなんだよな。

 ……で。問題は、それはボーナスステージから出てきたものであって、イベント、及び、レイドボス討伐の報酬「ではない」って事だ。


「月が替わって、いよいよ準備期間に入ったのだろうというのは分かりますが……」

「まぁ、そうっすね。ここまで露骨なのって、今最前線の大陸に来る前以来じゃないっすか?」

『相手の戦力も増強されている以上は妥当、と、言わざるを得ませんわね』


 そう。

 イベント及びレイドボス討伐の報酬は……戦闘力と耐性を強化する為のものだった。

 レギュラー感の出てきた「加護の水晶」はまぁいいとして、「討伐の紋章」とか、「万彩の染粉」とか、今ある装備を強化する系の報酬ばっかりだったんだよな。……一応まだあと2ヵ月ある筈なんだけどなぁ。もしかして、その間中ずっと強化する前提か? 今年の8月イベントは。

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