第1707話 58枚目:大詰め中
一応念の為、捕まえてロープで数珠つなぎにした
もう片方の手で「分光結晶」を加工した板を掲げておいたので、反応があった事を確認してから、再び石臼の下に戻る。
「……。なるほど、把握しました」
「ルディルの毒を飲ませたので、回復させなければしばらくはこのままだと思います」
「それでは“天秤にして断罪”の神の神官の方に来て頂いた方が確実ですね。少々お待ちください」
場所があれだが、神の奇跡自体は普通に通ったらしく、きっちり罰は下された模様。残念だったのは、捕まえられたのは4月に始めたばかりの新人だけだったって事だ。おかげで罰もそこまで厳しいものにはならなかった。
ちなみに、私が石臼の下でそんな事をしている間に、木材で作られている巨大な持ち手を切り落とそうとしていた
「で、お嬢」
「なんでしょう、エルル」
「なんかこれ、まずいものだって聞いたんだが」
「あー……まぁ、そうですね。回収できるのなら回収しておきたいです。とりあえず今回だけでも」
「相当まずいものなんだな」
悪いものでは無いんだが、取扱注意には違いないんだよなぁ。
なお持ち手を切り落とすと、体力バーは持ち手があった場所の上に浮かんで表示されるようになった。流石に穴の中に刺さってる分までは回収できないだろう。エルルも無理だったし。
ガタガタ揺れ続ける石臼の上に居続けるのも大変だったんだが、ついでにその場でエルルにも石臼の根について伝え、そっちの回収をしてくれるように頼んでおいた。大分頭が痛そうだったが、回復させる訳には行かないっていうのは理解してくれたので、大丈夫だろう。
「で、なんでお嬢もいるんだ」
「この巨大で大量の根っこを回収できるのが私ぐらいだからですが」
「確かにこれ重いけど、だからってこんな危険な場所に来なくても!」
「来てたから『バッドエンド』の所属員を捕まえられたんですよね」
「おい待て、それは聞いてないぞ」
おっと言ってなかったか。いやでも、石臼の下で動きがあって何人か捕まえたのは話した筈……あ、「私が」捕まえたとは言ってないな。そういえば。
さて無事エルルとサーニャの協力が得られた事で、根っこの回収はさくさく進んだ。やっぱり魔法で体力バーを削り切るより物理で切り離した方が早いな。このめちゃくちゃ太い根を斬れるっていう前提だけど。
ガタガタ揺れてるもんだから、途中から柱じゃなくて思いっきり魔力を込めた土属性の壁魔法で、開けた穴を埋める形で支えるようにした。そうでないと落ちてきそうで怖いんだよね。石臼が。
「これ、出れるのか?」
「少なくとも私が入ってきた方向は開けてますし」
「だからと言って、埋まっていくのを見るのはちょっと不安だなぁ」
なお、単純に土を動かせばもっと楽に済む事に気付いたのはもうちょっと後だった。もっと早く気付けば良かった。
とはいえ私のインベントリにも(一応)限界ってものがある。全ての根っこを回収する前にインベントリが一杯になりかけたので、本体の体力バーが残り1割になりそうなのもあって、一旦撤退だ。
残りの根っこは……まぁ半分は切ってる。それは間違いない。3分の1を切ってるかって言われるとちょっと怪しいけど。
「この木材そのものをどうするかはまた別の問題として、流石にあれだけ削っておいたのですから、全回復で特殊行動も最初から、とかは無いと思いたいですね……」
根っこの数だけ全回復とかいう事は無い、と思いたい。たぶん。恐らく。
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