第1702話 58枚目:戦闘再開
もちろん逃がした直後にエルルが来てくれたし、後で聞いた話だと司令部は全てのステージで石臼の周りを包囲していたらしい。だから、一応私の時間稼ぎはほぼ成功していたようだ。
ここで誤算だったのは、ゲテモノピエロ達が
「マジか」
「嘘でしょ」
「頭が痛いであるな……」
なおこれがその事を聞いた時の、エルル、サーニャ、「第一候補」の反応だ。気持ちは分かる。私も聞いた時は「は?」って思わず聞き返してたからな。何だあいつら専用のステージって。
どう考えても「モンスターの『王』」の手引き以外にはそんな手段は存在しない訳だが、問題なのはあいつらが好き勝手出来る場所があるって事が確定した、って事である。「第二候補」の予想が大当たりだな。外れてほしかった。
そしてそこからしばらくして、「均し富める模造の魔臼」は半分ががっちり凍って誰も手出ししていない筈なのに、その体力がじわっと削れている事が伝えられた。
「まずいであるな」
「まずいですね。とりあえず私は地面を掘り返して、臼の根とやらに直接攻撃できないか試してみます」
「うむ。……そういえば「第三候補」、火薬や爆薬の投入は阻止できたのであるか?」
「臼の上に転がっていた分は私がインベントリに回収しましたが、投入口を覗き込んだら、それなりの数の袋や木箱が放り込まれていたので……」
「そうであるかー。まぁ、来ると分かっていれば対処のしようもあるである」
という事で、残りログイン時間と相談しながら火力を叩き込んでいく事になった。司令部も大慌てだろうな。本番は水曜日の夜とアナウンスした直後で、その予定が大幅変更になったんだから。
大体ゲテモノピエロのせいなので、その辺は上手くヘイトを誘導すると思うけど。実際あいつらのせいだし。本当に敵役としては花丸満点だ。「モンスターの『王』」だけで十分だって点を除けば。
氷漬け状態は出来る範囲で継続、と聞いているので、「均し富める模造の魔臼」のところに辿り着いて、まずその根元に冷気の槍を叩き込む。……既に凍ってるからか、効きが良くないな。
「まぁだから、地面を掘る方向で動くんですけど」
土属性の魔法には、地面を割ったり穴を掘る魔法がある。それを連打して巨大な石臼の根元から穴を掘っていくと、確かに太い木の根のようなものがあった。……ちょっと半信半疑だったのは否定しないが、でかいな。
まぁあのサイズの石臼を支えている、って事になるんだろうから、こうもなるか。と思いつつ、もう少し穴を掘る。幸い無限に続いているという事も無く、それなりの距離で根っこの先を見つけることが出来た。
どうやら太く短い根がたくさん生えている形になるようだ。という事は、中心部に近い程太くなる筈だが、まぁその頃には体力も削れているだろうし。
「……ん?」
で、だ。
とりあえず根っこを切ってみるか、と思ったんだが、その前にちょっと、「分光結晶」を加工した板を通して根っこを見てみたんだ。
そしたら、その根っこの「1つ1つ」に、「黒地に青い体力バー」が表示されてるんだよな。一部は私を含めて上の方から叩き込まれた攻撃が当たったらしく、削れている。
「え。これが別体力って事は、もしかしなくてもこれが残機になるのでは」
つまり、全回復する可能性がある。
……否定したいが、竜都の大陸で仕留めた「モンスターの『王』」の最終形態を考えると、否定できないんだよな……。
「耐久度に回復力を入れるなって言うんですよ!!」
とりあえず司令部に報告だ。これ、臼本体じゃなくて根っこからやらないと、何度でもあの超吸引と回復が起こるやつだろうし。
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