第1657話 56枚目:制限対策

 ランダムで最大、とはいえ、スキル10個封印。これはきつい。大神の加護の保持者、と書いてあるという事は、祝福と加護が封印される状態……通常の住民は動けなくなる状態でも動ける程にプレイヤー特典大神の加護を分け与えられた仲間は、スキルの封印対象になるんだろう。

 もちろん、私を含めた最前線の召喚者プレイヤーは、膨大な数のスキルを持っている。まめに神域ポータルの「スキル倉庫」で入れ替えている召喚者プレイヤーもいるだろうが、私のように全部持ちっぱなしという人もいる筈だ。

 ランダムと書いてあるからにはランダムなんだろうし、必ず重要なスキルが封じられる、という訳ではないが……逆も、十分あり得るのだろう。


「武器スキル、防具スキル、魔法スキルに探索スキル。どれか1つでも封じられると厳しいスキルは多いですが……いえ、制御系と耐性系をごっそり封じられるのも厳しいですね」

「装備でその辺補ってるならまだマシなんだろうが、俺らはな……」

「何? どうしたの?」


 うーん、と、恐らく現地を含む召喚者プレイヤーと同じように悩んでいると、サーニャが戻って来た。交代でエルルがモンスターを倒しに行くのを見送り、同じことを説明する。


「スキルを!? えー、えぇ、それはちょっと、うーん」

「まぁそうなりますよね」

「エルルリージェなら大丈夫な気もするけど、ボクはそこまでたくさんスキル持ってないしなぁ……」

「サーニャの場合は魔法スキルに当たったらセーフですね」

「それはそうなんだけど!」


 魔法は使わないもんな、サーニャ。

 というのはともかく、かなりまずい。少なくとも私は種族スキルが1つにまとまっているし、【調律領域】だってスキルの1つだ。そもそもそれ以前の問題として、今の私は「加護の証」を使った装備である「祝護のヴェールカチューシャ」を外している。

 いやまぁ、突入しなければいいだけの話なんだけどさ。そういう訳にも行かないのが特級戦力だ。流石に「祝護のヴェールカチューシャ」無しで突入、という事にはならないだろうが、これ、エルルかサーニャは頼まれるんじゃないかな。


「えっ!? やだよ!?」

「やだって……まぁどっちかだと思いますし、封じられるのはスキルですから、装備とステータスで何とかなりそうかつ戦い慣れしてる、となると、まぁ。おやメールが」

「エルルリージェー! 早く戻って来て代わってー!」


 メールを確認してみると、案の定私を含めた出動要請だった。いや、私は無理だぞ。特級戦力とは言え、流石に「加護の証」無しは無理がある。という事で、その旨を返信。……装備の完成時期? 分かんないんだよなぁ。

 一応そのついでに、ミニイベントで手に入ったアイテムによる装備作成はまだ間に合ってない事を伝える。流石にいくらかはもう出来てると思うんだけど、少なくとも私は知らないからな。


「サーニャ」

「やだ!」

「やだじゃありません。クランハウス私の島に戻って、先日大変な問題になった透過する特殊モンスターが落としたアイテムで作られた装備を確認してきてください」

「だってそのまま突入させられる流れじゃないか! 装備を確認したらそれを持って効果の確認するやつだろう姫さん!?」

「まぁまずそうなりますけど、だからと言って突入部隊が全滅したらそれはそれで何か起こりそうですし」

「やだ!」

【成熟体】おとなになったのに子供みたいなごね方をするんじゃありません」

「やだー!」


 やだ、じゃねーんだわ。見た目と中身の乖離が酷いな、ほんとに。前からだけど。

 素の耐性が間違いなく高いのは私かエルルかサーニャだろうが。武器スキルを封じられても、アビリティが使えなくなるだけだ、って言いきれるほど熟練してるのは一握りなんだよ。

 例えばルチルが突入して【飛行】が封じられたらほぼアウトだし、ルウなんか【地上行動適正】が封じられた時点で詰む。大体の場合はそんな調子なんだから、最悪スキル無しでも戦える人が行かなきゃいけないんだよ。


「エルルリージェに行ってもらって欲しい!」

「エルルだと素の幸運値が低すぎて逆に不安なんですよ」

「うっ」


 ピンポイントで【人化】を封じられてもおかしくないだろう、エルルの場合。言っては悪いが今までの事を考えると。流石に私だって、通路に詰まって身動きが取れなくなるエルルは見たくない。

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