第1658話 56枚目:制限確認

 しばらくごねていたサーニャだが、自分が行くのは嫌、というのと、エルルに行ってもらう、というのを天秤にかけた結果、折れて行ってくれることになった。エルルが行ってハプニングが発生する可能性は高いと思ったらしい。

 というか、ごねている間にエルルが戻って来て、そういう事ならとエルルが行こうとしたのを慌てて止めて向かった、というのが正確だ。まぁ、話を聞いたら行こうとするよな。エルルなら。


「大丈夫か、あいつ」

「たぶん大丈夫だと思いますよ。流石にピンポイントで【人化】が封じられる可能性は低いでしょうし」

「……」


 そんなサーニャの態度にエルルも違和感を覚えていたようだが、私がそう言ったら全てを察したらしい。その上で黙って、私が見える範囲でモンスターを倒すように動きを変えて護衛を続けてくれたので、自分でも否定できなかったようだ。

 まぁともかく、一度クランハウスの島に戻ったサーニャは、どうやら掲示板の流れを見る限りは無事にミニイベントのアイテムで作られたアクセサリを持って、ダンジョンレベル21のオープン型野良ダンジョンに挑戦するメンバーに合流できたらしい。


「……。エルル」

「何だ」

「飲み会の幹事をクジ引きにしたら30回連続で当たったから順番に回すようになったって本当ですか?」

「は!? 待て何でそれをお嬢が、アレクサーニャかっ!」

「本当なんですね……」

「ぐっ」


 何でそれを、って事は本当なんだな。流石に私もここまでとは思ってなかったぞ。マジか。普段の様子を見る限りそんな感じは無かったんだけど……自力回避してるのか、妙な部分の運だけが悪いのか、どっちだ?

 そんな話が出ているが、人数と準備が揃ったので突入が開始されたようだ。全ての祝福と加護が封じられる、とあるので、当然ながらウィスパーでやり取りする事は出来ない。

 天井が開いていて、空を飛ぶことが出来ればいつでも出入りが可能なので、召喚者プレイヤーが定期的に出入りして外とやりとりするようだ。


「まぁ誰かが出入りすると、そこにモンスターが集まって来るみたいなんですけど」

「それで出来るだけ加護でやり取りしてたんだな」

「通路の幅自体はそんなに広い訳でもありませんしね」


 さて問題は、何をどれだけ封じられたか、だが……とりあえず現時点で突入した召喚者プレイヤーは、1個から5個のスキルが封印されていたようだ。1人は今身に着けている防具のスキルが封じられて、動きに多少支障が出ているとの事。

 一方サーニャを含めた住民組(対策済み)はというと、こちらは3個から8個のスキルが封じられたらしい。2人ほど体スキルが封じられて、かなり厳しそうだから人員を入れ替える事になったらしい。

 なおサーニャは3個封じられていたようだが、魔法スキルが2つと【釣り】だったようなので、問題はなさそうだ。


「仲間の方がスキルを封じられた数が多い、という事は、やはり加護及び祝福の強さで変わってくるんでしょうか」

「だとすると、アレクサーニャが3つも封じられたのは多くないか?」

「それもそうですね」


 もしかしたら、召喚者プレイヤーと住民で最低個数が違うのかもしれない。しかしこの分だと、最大個数の10個はそうそう引き当てないようだ。……まぁいくらなんでも、メインで使ってるスキルが封じられると厳しいどころじゃないからな。

 とか考えている間に、ダメなスキルが封印された人達が一度撤退して、応援が突入したらしい。


「うわ」

「?」

「外に出てもスキルの封印は外れず、再度中に入りなおすと追加でスキルが封印されたそうです」

「……それは、連絡が取れないんじゃないか?」

「……最大で10個、の筈なので、【飛行】か飛ぶのに必要なスキルが残れば大丈夫だと思いますが……」


 ただまぁ、体スキルが封印されていても、通常空間だと祝福と加護は元通りだ。装備補正もあるから、一応動ける状態ではあるらしい。

 にしても、これはランダム要素を噛ませたらダメなやつなんじゃないか? って気がちょっとするな……。たぶん、封印を食らった野良ダンジョンがクリアされれば、封印も外れるんだろうけど。

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