第1641話 55枚目:ミニイベント

 旗の謎が解けたところで、私は最前線から下がり、生産作業に時間を費やすことになった。まぁそれはそうだな。絶対にどうしたって魔法の松明は数が必要なんだから。そして、レシピを持っている召喚者プレイヤーは限られる。

 私が後方に下がっていれば、エルルとサーニャも手分けして動けるからな。サーニャの方はうちの子か迷子癖を知ってる召喚者プレイヤーが一緒でないと相変わらずだけど、今回はとりあえず灯りを辿ればいつかは合流できるから、まだマシらしい。

 あとは、警戒していた十字路と回転床の組み合わせだが、ダンジョンレベルが6を越えたら出現するようになったそうだ。しかも混乱の状態異常が積み込まれ、よほど耐性が高くなければ、罠が再起動するまでの数歩分ぐらいは実質ランダム状態になってるとの事。


「レベル6を越えたところで出てきたという事は、レベル11とかそれ以降には何が追加されるんでしょう……」


 面倒な事になる、っていう確信だけはある。だってフリアドだから。運営の実績とも言う。

 まぁたぶん、今月中にクリアさせる気は無いんだろうな。少なくとも見えている範囲だけでも相当な数があって、リアル2週間で攻略できるような規模じゃないんだそうだ(司令部予測)。

 だからたぶん、オープン型のダンジョンが追加されたっていうのがこのイベントのメインなんじゃないだろうか。実際、他の大陸でもオープン型のダンジョンが出現し始めているし。


「実質アップデートなんですよね。……そちらでも魔法の松明は必要なようですから、このレシピも広まるんでしょう」


 お金はとってないからいいんだけど。既に今の時点で試行錯誤による似たような消耗品の灯りは出てきてるし。

 と、比較的順調なスタートを切ったところで、2月14日だ。正直ミニイベントとかやってる暇はないんじゃないかなと思ったんだが。


「……相変わらず、運営は……」


 うん。そんな事だろうと思った。



 チョコレートを贈ったりそれを断ったりという戦いへの警戒が先に来ていたが、本来このミニイベントのメインとなるのはアスレチックだ。平和なミニイベントである。少なくとも設定上は。

 どうやら本人ないし誰かへのチョコレートを拒否する場合は、別空間で待機してチョコを贈りたい人を待ち構える形になるようだ。それにアスレチック自体も、大神殿内部と同じく、とまで隔離されたものではないが、ある程度人数は絞られるようだ。

 このミニイベントの特殊空間というか試練の中限定で行動を制限するお札もあるが、これを目当ての相手に貼ろう(もちろん、フレンド等で一緒に突入した場合を除く)と思うと、かなりのガチャ運が必要になるらしい。



 なので正直にソフィーさん達経由で『可愛いは正義』に協力を仰ぎ、検証班が割り出していた、1つの空間の最大人数で突入する事で、それ以外の人が入って来れないようにして、安心安全にアスレチックに挑戦できるようにした。

 で、それはいいんだが、問題はその、アスレチックのクリア景品。クリアタイムと難易度からはじき出されるポイントで交換できるアイテムの中に、だな。


「魔法の松明のレシピは広がるだろうと思いましたが、ここですか」


 大人しくなったのは気のせいだったか、と思う程、ばっちりメインストーリーに必要な物を手に入れる為のイベントだった。やっぱりチョコレートを贈るとか拒否するとか、そういう事をやってる場合じゃないだろう。

 司令部からミニイベントへの参加要請が出る筈だよ。流石に私の生産力が高いと言っても、流石に全体の消費量と比べると全く間に合わないからな。材料と手順自体は簡単だから、レシピが行き渡れば生産量は増える。

 ……いやほんと、今回のミニイベントを考えたの、誰だ?

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