第1639話 55枚目:ダンジョンギミック

 どうやら中央にある柱もしくは塔のようなものの手前には広場があり、カバーさん達はそこで戦闘に突入した。一応ボスに当たるのだろう。過剰戦力なのは今更なので、適当にあしらいつつ周辺と、柱もしくは塔のようなものを調べる事に重点が置かれていた。

 で、しばらく調べたところ、身体の1割ぐらいが歯車式機構になっているボスモンスターを攻撃すると、柱もしくは塔のようなものの硬度が下がっていくらしい。そして、その柱もしくは塔のようなもの「の」体力を削り切ったらクリアになるようだ。

 ボスモンスターに見える奴は、正面からだといくら攻撃を叩き込んでも倒れない無敵の分身。と分かった時点でエルルが、本体に当たる柱もしくは塔のようなものに攻撃を入れて、あっさりとクリア扱いとなった。


「おや、そのままこの場に出現するんですね」

「そうみたいですね。4人とも、おかえりなさい」

「……、設置したままの松明は無くなるのか」

「そう言われればそうですねー。流石に回収は無理だと思いますけどー」

「たっくさん作ったからぁ、問題ないと思うよぉ」


 通常のダンジョンは来た道を引き返すか、外へ転移するポイントが出現するものなのだが、オープン型だからなのか、ダンジョンそのものが消えると同時に、ボス部屋に居たメンバーがその場に立っていた。

 小さくなっている姿を見るのもなかなかちまちましてて可愛かったな、と、エルルに悟られると怒られるか呆れられる事を考えていたのだが。


「……。ちょっと違和感だったのですが、若干空間が広がってません?」


 なんか、クリアする前より、左右で同じようにダンジョンを攻略している召喚者プレイヤーが遠くなったような気がする。もちろん私は動いていないし、彼らも動いていないだろう。オペラグラスを顔に当てたままだし。

 最終報告レポートを司令部に上げていたのか、仮想キーボードをすごい速さで打ち込んでいたカバーさんの入力が一区切りしたところで、実際私の左右にあるダンジョン同士の距離を測ってもらったのだが……やっぱり、ちょっとだけ広がっていたらしい。

 それにしても変化が小さいな? と首を傾げていると、カバーさんが自分の分の「導きのタブレット」を取り出した。しばらく周囲を見て、ダンジョンがあった場所の中央に移動する。そして、戻って来た。


「ダンジョンの再出現までのカウントダウンが始まっていました」

「え」

「しかも、ヒントの部分に「次回ダンジョンレベル 2/5」という表示がありましたので、あと4回は再出現するようです」

「多いねぇ……」

「そんなに出てくるのか」

「そのようです。ただこの「導きのタブレット」でその情報を確認した場合、「今すぐに再出現させる」という選択肢が出現しました。恐らくはクリアを繰り返し、このダンジョンレベルというものを最大まで上げてクリアしなければ、完全な解決とは言えないのでしょう」

「いい加減面倒だね?」

「そうですねー」


 サーニャの意見に全面的に同意だ。一定回数クリアしないといけないとか、面倒な。レベルが上がるっていう表記なら、難易度は上がっていくんだろうし。

 これも情報共有の一環って事で、こっちを様子見していた召喚者プレイヤーの人達もちょっとうんざりした顔をしていた。まぁ、うん。これでモンスターが強くなり、罠が厄介になり、それこそ十字路の回転床とかが出てきたら、大変どころじゃないからな。


「……それにたぶん、進めば進むほどに、その再出現回数、というか、ダンジョンレベルの上限も上がっていくでしょうし。一定レベル以上になると特殊効果追加とかもありそうです」

「あの真ん中のが敵だって分かったんだから、遠くから狙っちゃダメなの?」

「空間に干渉してますからね。たぶん、突入した人達が目視しないと、当たらないと思います。外から中へ攻撃が通らないのと一緒です」

「そっか。壁ぐらいは壊せたらいいんだけど、そういう訳でもないだろうし」

「エルル、どうでした?」

「そもそも試練モドキであっても迷路の壁は壊すもんじゃないんだが、たぶんあれは壊せない奴だぞ」


 まぁその辺の穴というか抜け道はちゃんと塞いでいるだろう。問題は、正攻法でやるとまたかなり時間がかかるって事だが。

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