第1638話 55枚目:攻略開始

 この「彩られゆく空白の旗」についてはヘルマちゃんから渡されたものなので、後でヘルマちゃんに聞くとして。とりあえずイベントだ。ちなみに学ランっぽい新装備(衣装)はミニイベントの時用らしく、今はエルルもサーニャも軍服姿だ。無事返してもらえたらしい。

 メイン装備というか、防御力の一点に関して言えばこっちの方が上となる装備はあるものの、私は予定通り外からナビゲートする役割を担う事になった。中に向かうのは、カバーさんと、エルル、ルチル、ルディルの4人だ。

 戦力過剰なのはいつもの事なのでスルー。で、実は「詳細なオペラグラス」を使わなくても竜族わたしの視力なら見えるんじゃないかと思った訳だ。


「……見えませんね。やはり空間が影響しているせいでしょうか」


 まぁ、そういう訳にはいかなかったようだが。「詳細なオペラグラス」を通してなら、うちの子の中では一番視力が低いルドルでもちゃんと見えたらしいので、やっぱなんか補正が必要なんだな。

 ちなみに外からのガイドが必要という時点で勘の良い人は察したように、このオープン型のダンジョン内部ではオートマップが働かない。ギリギリウィスパーは出来るようだがメールと掲示板は不可。

 外から見た場合も、内部を進んでいる人の周囲及び、魔法の松明が設置してある周辺しか見えない。闇に沈んでいる感じで。まぁそれぐらいはしてくるよな。と思いながら、主に正しい方向に進んでいるかどうかを重点的に見ていたんだが……。


『カバーさん。もしかして今、オートマップ生きてます?』

『はい。他の機能も通常空間と変わりませんね』


 なんか時々メニュー開いてるなとは思ったんだが、どうやら少なくとも、今カバーさんが挑戦しているこのイベントダンジョンでは問題なく大神の加護召喚者特典が使えているらしい。

 一応周りの様子を見てみるが、そちらはウィスパーをしているからか声は聞こえないが、オペラグラスでダンジョンを覗き込みながら、ぱたぱた手や腕を動かしている召喚者プレイヤーがいる。

 私達と彼らで何が違うかと言えば、色々違いはあり過ぎるぐらいなのだが……今回はまぁ、うん。


『たぶんこの旗の影響ですね』

『恐らくそうだと思われます。ちぃ姫さん、領域スキルは展開していますか?』

『してません。しててもたぶん、ダンジョンの中には届かないと思います』


 これしかないだろうなぁ……。と、「彩られゆく空白の旗」を軽く見上げる。本当に最高なんだから。経緯が全く分からないのはともかく、後で感謝と共に気合入れた捧げものしないと。


『しっかり加護と祝福を重ね掛けて強度を上げれば、普段通りの行動が出来る。これは大きいですからね。要検証です』

『……まぁ、その必要強度が通常手段だとまず不可能、というぐらい高い可能性もありますけど』

『その可能性は高いですが、不可能ではない、というのは重要ですから』


 まぁそうなんだけど。確かに、オートマップがあるならそれに越した事は無いんだけど。

 円盤の部分は天井の無い迷路になっているのだが、そこに点々と設置されている魔法の松明は、ほぼ一直線に中心へと向かっている。つまり、方向を一度も間違えずに進んでるって事だ。

 通った道は覚えているというエルルがいるなら迷う事は無いと思っていたが、思った以上に迷いが無い。まぁオートマップがあるならそれはそうか。


『そろそろ中央の細長いものは見えましたか?』

『もうそんな距離ですか。こちらからはまだですね。周辺と同じく、上方は暗く沈んでいて見通しが利きません。壁も高く、その壁の上から周囲を見る事も出来ないようです』


 その円盤部分の迷路も、もう残り3分の1ぐらいなんだけど。本当に速いな。モンスターも罠も相手にならず、迷う事が前提の場所で迷わなければ、こんなものなのかも知れないんだけど。

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