第1619話 54枚目:レイドボス出現
歯車を使ったことで、扉そのものがモンスターになって襲い掛かって来る、という事も無く、無事に扉は開いた。……一瞬それっぽい動きが見えたんだが、エルルとサーニャを含めてこちらが攻撃を叩き込む構えを見せると、すっと内側に開いていったのだ。
念の為に掲げている灯りの奇跡の炎を押し付けておこうか、と思って旗槍を持ち直したら開く速度が上がったので、モンスターではあるらしい。それもそれなりに頭の回る。逃げんな。どうせ殲滅するんだから。
「……残念」
「同感だねぇ」
ルシルとルディルも何か用意してたみたいだが、それはともかく。素直に通すのであれば大人しく通っておこうと、推定の中心部へと足を進めた。
扉のあった場所を過ぎた途端に領域スキルの負荷が上がる。今回は最初から透過状態にしているが、出力を上げているからよほどでなければ悪影響は届かない筈だが、ちょっと自信が無くなって来たな。
というか、扉を過ぎたところで何人かが膝をついたり倒れたりする音が聞こえているので、他にも領域スキルを展開していた
「お嬢?」
「自然回復は割ってません」
「相手の力場が強くはなってるんだな」
「まぁ中心部ですからね」
あと、掲げてる灯りが時々不自然に揺れてるから、力場の一部を焼いてくれてるんじゃないだろうか。と言っても、奇跡の灯りは敵を燃やすと維持時間が短くなる。それを維持するにはそれなりに魔力が必要だから、ちょっと現実的ではないんだけど。
まぁ出来る事ならとっくに司令部の指示で灯りを分けて配ってるよな、と思っている間に、慎重に進んで倒れた人を後ろに下げたりしていてもある程度の距離を進んだようだ。
壁の厚みは他と変わらないらしく、中央は結構広い部屋になっているようだ。とりあえず、灯りの奇跡に照らされて見える範囲には何も無い。ボスらしく、部屋の中央か一番奥で、巨大な姿が待ち構えているのかと思ったんだが。
「っ、と!? 下、いえ、全方位!? 相手はこの空間全体の核で正しいようですね!」
そろそろ部屋の中央が見えている筈、ぐらいの距離まで来たところで、ぐらっと大きな揺れが来た。領域スキルの維持コストが跳ね上がった事も考えると、たぶん空間と物理の両方で。
透過状態のままだと押し切られる、と判断して、2重に展開している領域スキルを両方、他の力場を弾く設定に切り替えた。当然負荷は増えるが、これを通すと少なくとも
「結果共有、敵性反応が部屋の構成物全体から感知されました!」
「領域スキル持ちの周りに集まれ!」
「地形変化に注意しろ!」
私の警告に応じて、素早く
そうやって動いている間に、ガゴン、と、何か大きく重い物が動くような音がした。かと思えば部屋の中央の方から、ドゴォッ!! という衝突音が聞こえる。
一段と強まった負荷を耐えながらそちらに目を向けると、そこにはさっきまでなかった巨大な柱が出現していた。恐らく、天井か床から生えて、反対側に突き刺さったんだろう。
ガン、ゴン、と、実に荒っぽくその柱に天井や床から細い柱が斜めに接続されていく。それが一段落ついたと思ったら、今度は床に1m四方ぐらいのマス目を描く線が走っていった。
明るいのはいいが、蛍光色でギラギラ輝いているので視界が鬱陶しい。そして恐らく変化の最後だろう、部屋の中央にある巨大な柱が無数の歯車を生やすような形に変化して、球状に歯車を組み合わせた機構となった。
ギリギリガリガリ、調節でもしているように歯車がしばらく動いてから、一旦止まる。それと同時に、システムメールが届いた。
[件名:イベントメール
本文:イベント条件が満たされたため、レイドボスが出現しました!
このレイドボスは強力な特殊攻撃と防御力を持っています。
プレイヤー全員で力を合わせて退治しましょう!
※レイドボスがイベント期間内に倒されなかった場合、特殊処理が発生します
※レイドボスの防御力は環境によって変動します]
「鑑定スキル通りました! レイドボス名称、「狂い崇める外法の盲壁」!」
素早くシステムメールを開いて内容を確認している間に、司令部か検証班の人が鑑定系のアビリティを使ったんだろう。名称を看破した声と同時に、球状の機構部分に青い体力バーが浮かび上がった。
それが、非常に長いものが2本、というのはまぁいいとして。
「恐らくこのガイドラインに合わせて壁を作り出す能力があり、閉じ込められた場合は即死も有り得ます! 十分に注意をして下さい!」
足元に描かれた、蛍光色に光る格子模様。及び、天井と床から本体だろう巨大な柱に繋がる斜めの柱。その1つ1つに、緑色の体力バーが表示されているのは、ちょっとどうかと思うんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます