第1609話 54枚目:変化発見

 正しくフラグを立てて攻略を続けていると、壁の模様を描いているモンスターが発見された。旗持ち個体を中心とした集団でそれなりに強かったが、壁の模様を探している召喚者プレイヤーはベテラン勢だ。問題なく撃破できたらしい。

 ただその集団になったモンスターは連携してきた上に、まず初手で逃げようとしたようだ。その時は逃げた方向が直線の通路がしばらく続く場所だった為、魔法使い召喚者プレイヤーがその進路上に壁系魔法を設置して逃げ道を塞ぎ、速度のある召喚者プレイヤーが端にいたモンスターに攻撃を入れたら、そこから応戦してきたようだが。


「なるほど。時々領域スキルが押し返される感覚があるのにすぐ消えるのは、逃げられてるんですね」

「感覚自体はあったのか」

「ありました。そこそこ続いて来てそろそろ相談しようかと思ってたところです」

「そういうのはもうちょっと早めに言って姫さん」


 だから一応その感覚があった方向に向かってはいたんだけどな。そしてその先には模様があったから、模様の性質が変わって来たのかと思ったんだよ。モンスターの方だったのか。

 ちなみにその集団となっているモンスターは北側の大陸でも確認されたようだ。無事進捗を合わせる事は出来ているらしい。片方だけを集中して攻略すると、絶対に後が面倒な事になるからな……。

 なお集団になって壁の模様を描いているモンスターは、それぞれ体の一部がスライム状か歯車な機構状になっていたようだ。スライムが北側で機構が南側となる。


「……たぶんですけど、御使族の方に同行をお願いしている上で領域スキルを展開しているから今の所問題になっていないだけで、攻撃や倒した時の置き土産に、「モンスターの『王』」由来の異常を積み込んでくるタイプなのでは?」

「向こうの力場とは別に、って事?」

「だって明らかに大元の影響を強く受けている姿じゃないですか。もちろん逃げるのも連携するのも厄介ですが、姿に現れる程影響を受けておいて、領域スキル相当の力場を展開するだけ、というのはちょっと弱い気がしまして」

「まぁ、警戒はしておくか」

「そうですねー」


 ……。

 同意するルチルはともかく、エルルとサーニャはまず大丈夫だと思うんだけど。むしろ2人がダメだったら誰も耐えられない。あぁいや、護衛的な意味でかな。まず大丈夫だからいつもより早めに前に出るとか。

 まぁ逃げる、つまり壁の模様を描くことを戦闘より優先するモンスターが発見された今の時点で、1月も半ばを過ぎてるからな。ちょっと司令部も急ぎ気味だ。


「それにしても。連携して、攻撃性よりどこかからの指示を優先する、ですか。戦略を練る頭がある以上はいずれ来るだろうと思っていましたが……」


 召喚者特典大神の加護によって召喚者プレイヤーは遠距離でも連絡を取り合う事が出来るっていうのを考えると、相手もそろそろそういう手段が使えてくるのかも知れないからな。

 その上で連携するとなると、かなり厳しくなるだろう。少なくとも今までと同じように戦うのは無理だ。相手の動きそのものが大きく変わる訳なんだし。

 いよいよ本気で世界規模の戦争になってきた、という事になる訳だが。


「……本当にこの段階になって、とりあえず表面上は邪神の信徒が身動きできなくなっていて良かったですね。相手の厄介さがここまでの比ではない以上、同時に相手をする余裕はありません」

「それでも捕まってはいないんだけどな……」

「儀式場も、潰しても潰しても作られてるみたいだしね」


 エルルとサーニャは時々そちらに参加しているらしく、ちょっと声がげんなりしている。本当にしぶといなあのゲテモノピエロ。マジでここまでやって捕まらないんだ?

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