第1608話 54枚目:攻略進行

 最終的に召喚者プレイヤーの動きとしては、1パーティが神の像を持った御使族の人を護衛して儀式をするポイントに移動し、もう1パーティが協力者である御使族の人と一緒に周辺を回ってあの模様を消す、という形になった。

 模様を消す方は領域スキルの展開が出来て、模様を消す奇跡を願える、という条件がある上に、長時間イベントダンジョンの中を動き回り続ける事になるので、こっちがベテラン召喚者プレイヤーの担当だ。

 もちろん私もこちらである。うちの子と一緒だから戦力的にも十分だし、御使族の人ともそれなりに顔見知りだし。主に西側海岸の防壁内部で捕まってた人達と。


「しかし、それでいいんですかブライアンさん」

『ほっほっほ。構いませんぞ。本来の姿が道具であるものは、本質的に使っていただくことに喜びを感じますからな』

『分かります!』


 と、同意するのは言語スキルを獲得して喋れるようになったルージュだ。まぁ顔文字の声(?)で「゜+.(・∀・).+゜」って聞こえてるんだけど。これ、本当にどうやって認識してるんだろうな?

 なおブライアンさんは現在、【人化】を解除して手ぬぐいサイズの柔らかい緑色の布になっていて、それを私がヴェールと髪の毛の下を通して首にかけている。いいのかこれ。

 いやまぁ確かに、問題の西側海岸の防壁攻略の時も、物質系種族の人達は【人化】を解除して装備の一部みたいな形で同行してくれてたけど。いいのか? まぁ本人がいいって言ってるからいいのか。ちなみに現在のブライアンさんは、私におんぶされているような感覚らしい。


「いえ。助かるんですけど。自然回復の底上げと、私から皆への支援バフも割り増しになっていますから、とても助かっているんですけど」

「あ、割り増しになってたんだな。なんか感覚が違うなとは思ったんだが」

「調子がいいと思ったら、姫さんの魔法が強くなってたんだ?」


 なってるらしいんだよな。一応、現在の状態で装備扱いになっているようだ。効果はこの会話の通り。

 この状態だから、ブライアンさんの種族特性の範囲と私の領域スキルの範囲もほぼ重なっていて、模様の発見が捗ってるんだよな。もちろん見つけ次第、灯りの炎を近づけて燃やして消している。

 旗槍を掲げてその先端には神の奇跡である灯りの炎を維持している。儀式的にこっちの方がいいって言われて、衣装はコトニワの感謝祭のもの。で、御使族の人と一緒にいるを装備しているので、たぶん現在の私は過去最高に儀式的な防御力が高まっている。


「で、その防御力が皆にも派生していますから、影響は出ていない筈ですが、大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよー」

「ダイジョウブだヨー」


 空間の切り取りと回収は続いているし、模様を消した状態でそれをやっているなら「モンスターの『王』」の影響は強まっている筈だけど、うちで一番デバフ関係に敏感なルチルと、耐性全般が弱いルウが大丈夫なら問題ないな。

 まぁそもそもイベントダンジョン自体が広大だから、イベント期間のほぼ3分の1を無駄足で過ごしてしまった現在、取り戻すのに加速をかけたとしても、まだまだ変化は現れないかも知れないのだが。


「もうちょっと相手の懐に踏み込んだら諸々まとめて焼けませんかね」

「止めろお嬢」

「姫さん、何かにつけて焼き払おうとする癖がついてない?」

「癖までは行ってないと思うのですが」


 だってそれが一番確実じゃないか。敵の領域には踏み込んでるんだし、要救助対象がいたとしても味方判定で火傷ぐらいに留めてくれるだろうし。

 ……癖にはなってない、よな? 流石に何でもかんでも燃やして解決しよう、とまでは思ってない、筈だぞ? 確かに、「モンスターの『王』」相手にはティフォン様の炎をお借りする事が多かったけども。

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