第1607話 54枚目:ギミック対処
どうやらスクリーンショットだけでは壁の模様を解明しきれなかったらしく、しばらく待っていると司令部の人達が合流してきた。てことは、この模様そのものには意味がないか、単体では意味が読み取れないものだったんだな。
もちろん御使族の人は近くにいるし、私は領域スキルを2重に展開したままだ。ただその状態でも私以外に壁の模様は見えない筈なのだが、その環境で更に司令部の人が領域スキルを展開すると、その展開した人には模様が見えるようになったらしい。
この事から、この壁の模様を見る為には、御使族の人の種族特性の効果圏内にいる状態で、一定以上の出力の領域スキルを、最低2種類以上発動する必要がある、という事が確定した。
「ややこしいんですよね」
「相変わらず俺には違和感があるだけでその模様は見えないんだが……」
「同じく。ボクらぐらいには見えてもおかしくないんじゃない?」
「御使族の方々と同じく、特別警戒対象なのかもしれませんね」
で、その壁の模様だが、「モンスターの『王』」の力に染められた塗料で描かれていたらしい。つまりは儀式場だな。ただしその効果は不明で、どこかへ転移したり何か効果があるとかではないらしいことから、神々に干渉するマーキングという可能性が高いようだ。
とりあえずその模様は奇跡を願って綺麗に消した状態で空間を切り取って回収。外に出てからもう一度突入すると。
「明らかにさっきよりモンスター側の力場が強くなってるんですよね。これはもしかしなくても、あの模様で干渉される分と空間を回収する分で相殺されていたのでは?」
「言いたくはないが、徒労だな」
という事で、出来るだけ探索範囲全体を探索し、違和感があったら領域スキルを重ねて展開して、模様を消してから空間の回収を行うように、という方針が司令部から発表されたし、御使族の人達にも伝えられた。
御使族の人が問題の模様を見る事が出来れば奇跡で一発なのだが、見えるのは領域スキルの展開者だけなので、敵を焼き尽くす特性付きの灯りで燃やして消すのが主流となっている。
ちなみに、私が旗槍の先にティフォン様の奇跡である灯りの炎を掲げていても特にイベントダンジョンは燃えなかったし、模様が自動で焼かれることも無かった。何か対策されているようだ。
「まぁ「指針のタブレット」にも「導きのタブレット」にも表示がない時点で、何らかの方法で神の力が阻害されているのは分かっていましたけど」
「そもそも、そこが妨害されてるから御使族には分からなかったんじゃない?」
その可能性もあるな。どうしたサーニャ、今回はすごい冴えてるじゃないか。いや普段も戦闘関係だと頭の回転が速いし判断が的確だけど。
ともかく、イベントダンジョンを奥へ進む正しい方法は分かったし、それに出力の高い領域スキルが必要なら私も前に出る必要があるだろう。御使族には分からない、というギミックの性質上、「第一候補」にも模様の発見と解除は無理だろうし。
イベントが始まってからもしっかり生産作業をしていたお陰で、各種消耗品には随分余裕がある。まぁ元々私はあんまり消耗品を使わないんだけど。それでも余裕はあった方がいいからね。
「お嬢?」
「姫さん?」
前に出る事自体を楽しんでる訳じゃないのでセーフ。前に出て戦う事を楽しみにしてる訳でもないからセーフ。セーフったらセーフだ。
私は1プレイヤーとしてゲームのイベントに参加したいだけだから。後方支援が大事なのは分かってるんだけど、私の適正ポジションはタンクだから前に出てる方が正しい姿だし。
どっちかというとうちの子皆と一緒に行動するのが楽しみでメインだから。皆で行動するのが楽しいんだから。最前線には出るけど前衛は張らないし。……だから、そんな疑わしい目を向けなくてもいいじゃないか!
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