第1606話 54枚目:ギミック発見

 ある種攻略が停滞している、となっても私に出動要請がかかる事は無かったので、最前線の状況が気になりつつも生産作業を続けていた。まぁね。補給はね。大事だからね。

 しかしそれにしたって前線に呼ばれなさすぎじゃないだろうか。と思いつつも頑張って生産作業をしていた訳だ。一応、ちょいちょい後方である私の所に来てくれるフライリーさんやルディルに聞く限り、攻略自体は少なくとも見た目順調らしいし。

 ただ、見た目に順調でもなぁ……。と、ある種やきもきしながらイベントの進捗を見守っていた訳だが。


「まぁ無理がありますよね。神々も干渉できたとは言え境界線を開いたところどまりでしょうし、下手にシステムが近いからって同じものだとは限らないのは罠として基礎の基礎ですし」

「だからってお嬢が出てくることになるのは納得いかないんだが?」

「納得して下さい。私が居れば、少なくとも違和感・・・には気づけるんですから」

「何で御使族でも分からない違和感が、姫さんなら分かるのかなぁ?」

「大神の加護っていうのはやっぱり大きいんじゃないですか?」


 やっぱりこれはダメなんじゃないだろうか、と、掲示板でも囁かれ始めたところで、私に最前線へ参戦してほしいという要請が来た。なんで私かって言うのはエルルとサーニャの説得の言葉にもあった、違和感、というのが関係する。

 主に神の像を運び、空間を切り取って回収する儀式の実行者となる御使族の人は、種族特性と領域スキルにより力場を展開している。だからその近くにいれば「モンスターの『王』」の影響力という名のデバフは無視できるのだが、念の為重ねて領域スキルを展開していた召喚者プレイヤーがいたらしい。

 そしたらその道中、どうも御使族の人と、他の召喚者プレイヤーと、領域スキルを展開している召喚者プレイヤーで見え方が異なる壁があるらしい事が発覚したんだそうだ。ただ再検証しようにもその空間は切り取って回収されているし、壁が動いている疑惑もあったので、領域スキルの出力が高い私が呼ばれたらしいんだよな。


「で、実際私が2重に領域スキルを展開すると、違和感がはっきりしましたからね。やっぱり出力の問題でしょうか」

「御使族と一緒に行動する、っていう前提なのは間違いなさそうだけどな」


 で、実際私が領域スキルを展開しつつ、エルルとサーニャおよびうちの子と一緒にイベントダンジョンを進んでいると……あったよ。明らかに他とは違う模様の描かれた壁が。

 一応御使族の人にも聞いてみたんだが、そちらには普通の壁に見えているらしい。で、うちの子及び私以外の召喚者プレイヤーはというと、その壁に違和感を覚える、という事が確認できた。

 私視点でスクリーンショットを撮ったら無事に壁の模様は確認できたので、今はそのスクリーンショットを司令部に送って反応待ちだ。御使族の人には悪いが、その模様の近くで待ってもらっている。


「この模様を消すのか、模様をヒントにどこかへ行くのか、あるいは模様がある場所に干渉するのかは分かりませんが、ややこしい状態になってますね。ここまで分からないとなると、御使族の人達だけにはバレないようにしている気もしますし」

「……まぁ、それはそうだろうな。信仰に近いものがあるなら、真っ当に対抗できる相手をまず警戒するだろ」

「警戒ならまだいいけど、狙いが御使族っていうのもヤだな。だってこの大陸の西海岸では御使族が捕まってたんだろう?」


 いーっ、とばかりサーニャが顔をしかめて言うが、言われてみればそれもあるかも知れないな。この壁の部分に触ったり干渉したりしたらどこかへ連れていかれるとか。

 ……いや。空間を切り取って回収する、という前提なら、空間そのものを介して神々に干渉しようとしてる可能性まであるか? その為のマーキングっていうのも、有り得るな?

 本っ当に、面倒な相手だな。

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