第1605話 54枚目:イベント状況

 戦力としては(私が安全圏にいるって事で)エルルとサーニャが前線に出てるし、そもそもうちの子は実質的に行動制限が無くなった状態だ。私が居なくても問題なく探索して戦闘していると聞いている。

 流石に内部は広いようだが、神の像を設置して儀式をする為に御使族の人が突入し、それを召喚者プレイヤーが護衛するという形で探索している為、こちらも種族特性で力場が展開されているから、これまでよりもスムーズに進められているようだ。


「まぁそれでも戦闘にはなりますし、戦闘すれば消耗しますし、消耗品は補充する必要があるんですが」


 という訳で、私はせっせと生産作業を続けている。いやいいんだけど。制御関連のスキル経験値が美味しいからいいんだけど。大型イベントは大体の場合最前線に出てたからちょっと落ち着かないというか。

 たぶんニーアさん辺りに知られたら、それは戦闘狂って言うんですよ! とか言われかねないので黙って作業だ。つまらない訳じゃないしな。双子はいないけど、ルディルは時々戻って来て一緒に作業してくれるから。


「忙しいんですけど、平和ですね。とりあえず今の所」

「そうっすねー。何か妙な空間に引き込まれたり厄介なモンスターが出て来たりしてもないみたいっすし、順調で何よりっすね」


 なおフライリーさんはどうやら妖精族の種族スキルで、内容はランダムだが効果の高いバフがつくお菓子を作れるようになったらしく、ここにいる間はそれを作っている。効果も味もなかなかに好評なようだ。

 しかしいつの間に最前線にいないと落ち着かない体になったのか……。……だいぶ前からな気がするな。今までは大体の場合最前線に居続けてたんだし。流石に「第二候補」の類友判定されるのは嫌なので、このイベントの間ぐらいは大人しくしておこう。後方支援も良いものだ。

 という感じで過ごす事、1週間。


「んん……?」


 1月最初の土日が終わって、そこでだいぶ加速が掛けられた筈だ。実際加速はかかっている。私の方にも、あの神の力を込める系のアイテムと同じ並びになるらしい儀式用の神の像を作る依頼が来たからな。

 それはつまり“細き目の神々”やボックス様にも空間を切り取った分の力が移動するという事であり、それだけ他の神々にも力が行き渡ったって事だから、加速はかかっている筈、なのだが。


「……ほとんど環境が変わっていない……?」


 少なくとも司令部から情報が伝えられて、元『本の虫』組の人達によりクランメンバー専用掲示板に書き込まれている範囲では、変化らしい変化がなさすぎる・・・・・らしい。

 今回のイベントで攻略しているのは、大陸を封鎖していた陽炎のようなものが変化した、巨大なイベントダンジョンだ。聖地の島から続いてきた「モンスターの『王』」によって用意された(というバックストーリーの)試練モドキの流れで行くと、奥に進めば進むほど、ある意味環境は悪化していく。

 ところが、いくら御使族の人が居て、召喚者プレイヤー側もしっかりと対策しているとはいえ、その環境の悪化が皆無なのだそうだ。少なくとも見た目には攻略が順調な為、ちょっと気付くのが遅れたらしい。


「いえ。順調である事に変わりはありません。少なくとも御使族の人達からすれば、空間を切り取って回収した分だけ、こちらの神々の力は増している筈ですし」


 そこが上手くいっていなければ、もうちょっと早く情報が上がってきていただろう。つまり気付くのも簡単だって事だからな。だから、そこは上手くいっている筈だ。

 この場合、考えられるのは。


「……想定を越えて内部が広大な場合。もしくは、こちらが回収するペースを上回る供給がある場合。最悪、どこかでこちらの神々の力が掠め取られている、まであるでしょうか」


 まぁどれにしたって状況は悪い訳だが。

 しかし複合神殿を作って、そっちは今現在も最前線はちょっと不安が残る、ぐらいの召喚者プレイヤーが通って空間の歪みを消費している筈なのに、まだ御しきれてないのか。

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