第1604話 54枚目:イベント開始

 特殊ログイン時間自体は平和に終わり……前回と違って神の誰かが「来ちゃった☆」する事もなく……無事に年明けを迎えた。御使族の人達によって、邪神関係の封印も固め直されたらしいし。

 警戒はまだ続けるが、それでもだいぶゲテモノピエロからの妨害は考えなくて良くなった。本当に頭痛の種だったからな。搦め手を主とする大きな敵が1つ、実質的に減ったのは良い事だ。本当に。


「いやまぁ、想定外の敵が増えている状況自体がおかしかったんですけどね?」

「指名手配犯が逃げ回ってるっていう状況っすから、はやく捕まって解決しないっすかねー」

『反省からも程遠いでしょうし、時間を与えると碌なことにならないのも明白ですものね』


 ちなみに指名手配は全世界規模でされている。今までは国単位だったのが、御使族の敵って事で世界規模になったからな。魔法もスキルも神の奇跡もある中で世界中で指名手配されて、逃げられる訳が無いんだけどなぁ?

 まぁゲテモノピエロの事はさておき、イベントが始まった。そしてイベントの肝である空間の切り取りと回収だが、どうやら道中の探索ではなく、特定のポイントに神の像をおいて祈りを捧げる儀式をする事で成立するらしい。

 だから、その特定のポイントで儀式をした神の総取りになる訳だな。まぁそんなことだろうと思ったけど。


「まぁその儀式をするポイントというのにも大小あって、小さい場所で数を稼ぐか、大きな場所を取りに行くかというのは戦略になるんでしょうけど」

「そもそも勝負にするなっつー話っすよね」

『全くですわね』


 なんていう会話をしている私達がどこにいるかっていうと、何故か竜都の大陸にある竜都、そのお城の、私のプレイベートスペースだった。

 いや。いや、私はもちろん、フライリーさんもマリーも、最初から飛ばすつもりだった。見た目からして広い上、絶対に内部空間は見た目より広いんだから、いくら手があっても足りないだろう。

 何だが。


「……まぁ、確かに、ちょっとやり過ぎたかなというか、他の方法を、検討ぐらいはするべきだったかなと、一応思わなくもないのは確かですが」

『これを機にボックス神をしっかりこの世界に根付かせても良いくらいだったのではないかしら』

「信仰爆上がりなのは分かってたっすけど、思った以上に広まってたみたいっすねー」


 その、だな。

 ボックス様はあれだ。世界が出来上がってから身を寄せた、創世に関わっていない神様だ。なので最初は弱小勢力として扱われていた訳だが、召喚者プレイヤーにその信仰が広まりまくった上、私が竜族に布教したように、他の召喚者プレイヤーも知り合いの住民に信仰を進めてたみたいでさ。

 聖地の島に神殿が完成した時点で、かなり強い神様になってたらしいんだ。しかもそこから、私やマリーがボックス様の「敵を与える」奇跡を願い、そこで感謝祭の衣装で歌と踊りを捧げた事で、その奇跡で出てきたモンスターは全部感謝祭の捧げものとして扱われた。って、事でだな。


「まさか、一強過ぎるからという理由で、御使族の方々からストップがかかるとは思いませんでした」

『一強になったところで困るのは他の神々だけでしょうに』

「たぶんそういう事じゃねぇと思うっすよ」


 という事で、大人しく生産作業をしている訳だ。何故クランハウスの島ではなくお城にいるかというと、島にいると私が気分転換と材料調達を兼ねてボックス様の試練を受けに行くからだな。

 ならティフォン様達の方で、と思ったんだが、それならエルルやサーニャだけでいいし、そもそも竜族が完全復活した現在“細き目の神々”も自重してもらいたい側に入っている。

 後は、主に“偶然にして運命”や“採録にして承継”の神に守られていた、概念系の神の力を集中的に戻す必要があるっていうので、御使族の人達がその神の像を作って持ち込み、そこまでの護衛を依頼しているようだ。


「もちろん依頼を受けずに突っ走る召喚者プレイヤーがいない訳ではありませんが、ベテランになればなるほどその辺ちゃんと話を聞く人は多いでしょうし」

「ましてや御使族の人から直接の依頼っすもんね。竜族の人達の時を考えると、こういう依頼は受けておいた方がいいっていうのは分かってるっすし」

『ままなりませんわね。ボックス神が一強になっている状態の方が健全な気がしますわ』

「ここはコトニワじゃなくてフリアドですよ、マリー」


 流石にそれはちょっとな。ボックス様が最高だって言うのは間違いないが、信仰的世界の乗っ取りはやっちゃダメだろ。むしろそれはボックス様の方が遠慮するだろうし。

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