第1599話 53枚目:攻略準備

 時々ルフィルとルフェルにスタミナポーションやソフィーナさんの料理を差し入れたりしながら生産作業をして、ついでに各種衣装というか装備や旗槍も直してもらい、28日の午前中には何とか可能な限りの準備を整えた。

 司令部はちゃんと999回目のステージ3つともに「中継点の楔」を設置しているので、挑む事自体に問題は無い。というか掲示板の報告を見る限り、あれから何度も挑戦を繰り返し、ボスモンスター討伐タイムは1時間ちょっとにまで縮んでいるようだ。

 どれだけ空間の歪みを引き出して削る必要があるのかは分からないが、これなら全力でやっても大丈夫だろう。準備期間の間に、私基準の威力となる壁系魔法のお札は文字通り山ほど作ったし。


「で、これなに「第三候補」?」

「ベテラン召喚者プレイヤーがイベントダンジョンに向かう分、絶対的な手数が足りないからお札が欲しいって言ってたじゃないですか」

「まぁ言ったけどこうなる? 何と戦争すんの?」

「モンスターの群れという名の特殊個体と劣化レイドボスの群れですね」

「そういえばそうだったな! というか「第三候補」また全力で歌って踊んの!?」

「全力で歌って踊りますが?」

「うーんこの!」


 どうやら私と「第四候補」は引き続き南側の大陸を担当するらしい。では北側はというと、奇跡の実行者がマリーと双子、全体指揮は司令部が行うようだ。

 戦力としては、南側はうちの子と竜族部隊の人達、『可愛いは正義』と『ワンマンアーミー』の召喚者プレイヤー、「第四候補」の仲間。ここには大量の使い魔も含まれる。

 そして北側はというと、まず「第二候補」は内部にいるがその支援クランである『武道』は外を担当。「第五候補」と『妖花の僕』の人達が現場指揮を担当し、あとは魔法スキルを使えるという条件で中堅以下の召喚者プレイヤーを大勢呼んで、数を揃えて戦力にするらしい。


「まぁ司令部が全体指揮を執る、という事は、危なくなったら司令部の中の人が戦力として参加するって事なんでしょうけど」

「正直なとこ言っていい? うちにいる元『本の虫』組メンバーだけで相当な戦力になると思う!」

「それはそうでしょう。どちらかというと魔法スキルの育成支援ですよね」


 カバーさんは言わずもがな、うちに来てくれた人だけに限らず、元『本の虫』組の人達は皆強いから。ここまでずっと最前線に居続けた人達なんだから、弱い訳が無いんだよな。検証班は伊達じゃないんだよ。

 検証の為に色々やってるって事は、特殊なフラグもいくつかは踏んでるって事だ。そして特殊相応に難易度が高いサブクエストをクリアすれば、もちろんそれに応じた報酬が手に入る。

 情報は力だ。そしてそれ以上に、検証を行うには実力が必要だ。それだけの話なんだよな。


「ま、見方によっては良い機会なのでは? いい加減『本の虫』を知らない召喚者プレイヤーも増えていますし、フリアド世界の『自由』を舐めてかかる召喚者プレイヤーはどうしても一定数から減らないようですし」

「それもそーだな! 何でも力で解決できる訳じゃないとはいえ、それでも絶対的にどうしたって力は必要なんだっていうのをお勉強してもらうか!」


 もうだいぶ忘れられているみたいだが、『本の虫』の解散理由、「信頼され過ぎて色々困った事になったから」だからな?

 半分ぐらいはあのゲテモノピエロのせいとはいえ、それだけの信頼を、少なくとも真っ当な召喚者プレイヤー全体からされてたって事だからな?

 そもそも、『本の虫』という看板は下ろしても、検証班のネットワークは生きている。もちろん秘匿するべき情報は秘匿されているし、クラン同士の健全な競争を妨げない為に共有されない情報も多いが、水面下に潜ってるだけで存在はしてるんだ。


「……正直、あの『バッドエンド』にも検証班が所属していて、検証データだけは確保している気がします。そこで情報を流すと「検証班」ではなくなるから流されていないだけで、把握だけはしていてもおかしくないんですよね」

「まぁそれやっちゃうと「検証班」じゃなくて「スパイ」になるからなー。最優先はデータの収集だろうし、そんぐらいは仕方ない。それをやるんなら、俺らのアレコレだって流される可能性が出る訳だしな?」


 ただの推測だけど、それぐらいはしててもおかしくないんだよな。ある意味あっちも、混沌・悪のルートを全力で走ってるんだし。

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