第1595話 53枚目:干渉元の抵抗

 あの扉の空間(仮称)で戦闘をして向こうのリソースを削った結果は、イベントダンジョン内部の妨害になっている地形の耐久度が下がる事と、奇跡の出力が上がる事だったようだ。最前線では大規模破壊が捗っているとの事。

 なお通常空間から調べてもらったところ、あの陽炎のようなものに蓄えてあった空間の歪みが減っていたらしい。これも南側と北側の大陸で差を作る訳にはいかないが、ボックス様の奇跡はともかく、敵を倒し尽くすのであれば私でなくても問題は無い。


「元々北側には「第二候補」が向かっていますしね。あそこまで火力が突き抜けていると、罅に直接攻撃しても結構なダメージになるそうですよ」

「俺らでもあれに対する直接攻撃はしなかったのにか?」

「えぇ。それが通ったって言うんだから相変わらず滅茶苦茶な腕ですね」


 ちなみにこの後同じことをエルルとサーニャにもやってもらったが、やっぱり思ったように攻撃は通らなかったようだ。まぁ普通はそうだよな。そこを通している「第二候補」がおかしい。

 まぁイベントダンジョンを攻略するにも私の領域スキルは活躍するので、基本的に扉の空間(仮称)で戦闘してリソースを削るのはベテラン召喚者プレイヤー達だ。領域スキル自体は、特に聖地の島が解放されてから習得者が増えているようだし。

 パターン的にリアル25日になったらまたあの扉の空間(仮称)に飛ばされる範囲が広がるのはほぼ確実だし、そもそもイベント期間の終わりが見えてきている。ここで決められるなら決めておきたいのは確かだ。


「まぁそれで上手くいけばここまで悩んでないんですけど。「進行ポイント」の数が900を越えてからますます露骨になりましたね」

「露骨……まぁ、そうとも言えるだろうが」


 どうなったかと言えば、果てしなく広大な草原や砂漠と言った「壊すことが出来ない障害」の場所に切り替わった上に、ボスモンスターがステージ全体をランダムに移動するタイプになった。

 一応ここはまだ神々の力の方が強いらしいので、ティフォン様の灯りの奇跡やボックス様の奇跡を願ってもあまり対策にならない。具体的には、炎はそこまで燃え広がらず、雑魚モンスターはおびき寄せられてもボスモンスターは探さないと行けなかった。

 ここまで広ければ馬相当の生き物に乗って移動する事も出来るが、きっちり足を潰す系の罠が仕掛けてある。本当に知能が高くて戦略が組める上に学習する相手は厄介だな!


『ここまで見通しがいいと迷う心配もないね! 鍵のモンスターを見つけたよ。普通の牛ぐらいの大きさだったけど、まぁまぁ強いんじゃないかな?』

「ありがとうございます、サーニャ」


 なので、エルルとサーニャも交代で【人化】を解いてボスモンスターを探す方に参加してくれている。ちょっと手と移動速度が足りない。大神の加護召喚者特典が使えるから出来る方法だな。

 誰かが見つけたら召喚者プレイヤー全員を集めてボスモンスターのところに移動して、戦闘だ。ボスモンスターを「倒す」のに参加する人数は多い方がいいから。

 ちなみに召喚者プレイヤーの誰かが見つけた場合はボスモンスターを追いかけつつ現在位置の報告を続けるが、エルルとサーニャの場合は報告に戻って来ても問題なく追いつけるので、私は領域スキルを展開して待つことになっている。


「私が一緒に行ってそのまま連絡を入れる方が早いと思うんですけど」

「ちょっとの間でも後ろにいろ」

『何かにつけて前に出ようとしないで、姫さん』


 ただの合理性もしくは手間の問題じゃん。確かに司令部の人達が居て、後続の召喚者プレイヤーが来る場所に領域スキルを展開しておくのも大事だけど、領域スキル自体は私じゃなくても展開できるんだし。

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