第1594話 53枚目:ギミック突破

 どうやら観測班曰く、モンスターを倒すことでこの空間の耐久度及びこの空間自体の「モンスターの『王』」の影響全域デバフが減っていくのは確実らしい。それに反比例して、神の力や奇跡による特殊アビリティの威力が上がっていくのもほぼ確定のようだ。

 神の力を借りる系の特殊アビリティを叩き込むと、その動きは加速するらしい。領域スキルもそこに入るらしく、私が展開しているやつ以外にもぽつぽつと発動されているようだ。

 しかし相手の底が見えないな。と思いながら進捗を負荷の軽減という意味で感じつつ見守っていると、何の操作もしてないのに「指針のタブレット」がインベントリから出てきた。ん???


「……あー……」

「待って姫さん。何かやな予感するんだけど」

「良い勘ですねサーニャ。司令部に伝言をお願いします」

「……うわー」


 何だ? と思いながら画面を見ると、サブクエストが1つ受注可能状態になっている。何の事だ、と思いながら内容とヒントを見て、出てきた第一声がさっきのだ。

 それに対して「嫌な予感」を感じたサーニャにはその画面を見て司令部への伝言を頼む。エルルは今ちょっと前線に出てるからな。まぁ司令部の人はすぐ近くにいるし、これを伝えたらエルルも引き上げてくるだろう。

 何のことかって言うと、受注可能状態になってるサブクエストがだな。「神の灯を掲げよ」っていうタイトルなんだ。この時点で大体察しがつくんだが、そこにくっついてる“ナヴィ”さんのヒントがまた。


「『……これは2部連続型のサブクエストです。灯りを周囲の人に持ってもらった方が良いでしょう』、と来ましたか。まぁ持ってますけどね、あの衣装」


 つまり、ティフォン様の「敵を燃やし尽くす」効果付きの灯りの奇跡を願って用意した上で、ボックス様の「敵を与える」奇跡を願えって事だ。2部連続でこのタイトルとヒント、今の状況で他には無いだろう。

 しかしそうか、それぐらいはしないと削り切れないぐらいモンスターを倒さなきゃいけないんだな。流石にそこまで時間は掛けてられないというか、時間がかかっていると色々間に合わないんだろう。


「召喚者って本当こういう時躊躇わないよね」

「オッケーが出たんですね」

「すぐ前線引っ込めて灯りを移す準備するってさ」


 まぁベテランも司令部も、神の方から干渉してくるっていうのは非常事態か、やらないと何かが間に合わない状態かっていうのは分かっている。だから指示も動きも早い。他の場所で展開していた領域スキルも展開を終了して、こっちに合流するようだ。

 しかし最近のティフォン様とボックス様、仲良しか? 私としてはとても嬉しい事なんだけど。ボックス様とティフォン様達がお茶会、じゃないな。円卓を囲んで宴してる箱庭でも作って捧げればいいのか?




「分かってたけどひでぇなあれ」

「それぐらいしないとアカン判定出てる現実」

「歌って踊れる皇女はよいもの」

「もうステージもあれでいいんじゃね?」

「それは流石に進行不可バグが出そう」

「担架足りんから、筋力高い奴手伝えー」


 という感想はともかく。感謝祭の衣装(ボックス様仕様)に着替えて旗槍で踊りと歌を捧げた訳だが、まぁ、すごい事になった。空間の罅割れがみるみる広がっていったからな。

 そしてその罅割れが領域スキルを展開している場所以外を大体埋め尽くしたところで、ひときわ大きな罅割れが発生。そこから空間全体が崩れ始めて、領域スキルの中にいた召喚者プレイヤーは複合神殿の外へと転移させられた。

 空間を崩壊させた影響は今司令部が調査中だが、どうやら私が全力で領域スキルを展開し、扉が全て壊れた時点で、あの扉の空間(仮称)は別のものが出現していたらしい。


「なるほど。壊したところであの移動が妨げられる訳ではないんですね」

「壊さないと出られないのに、壊したら移動できなくなるのはな」

「まぁそもそも前のステージに戻されるだけの、ダンジョン試練の進行を妨害する為の空間なんですけどね。むしろ壊れて使えなくなった方が良かった気はします」

「……そう言われればそうだな」


 流石にあの扉の空間(仮称)に飛ばされる「進行ポイント」が減ったりはしないだろうが、ステージの難易度が下がったりぐらいはしないだろうか。もちろん、「進行ポイント」が素直に先に進む為のものになるのも十分歓迎なんだけど。

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