第1593話 53枚目:ギミック調査

 突発的に発生した大規模戦闘だが、ベテランあるいは廃人召喚者プレイヤーなら慣れている。基本は私の領域スキルの内側で迎撃しつつ、外の状態の確認だ。特級戦力としてエルルとサーニャも控えてるし。

 領域スキルの展開負荷はそれなりと言ったところだろうか。領域スキルを展開している場所以外が暗く沈んでしまった上に、壁や床、その境目がよく分からなくなっているから、距離感がつかめない。

 まぁ元々不思議な空間ではあるから、何が起こってもおかしくはないんだけど。神々と「モンスターの『王』」で空間的なせめぎ合いをしている場所でもあるし。


「しかしまぁ、いくらでも出てくる感じがありますね」

「いくらでも出てきそうではあるな」

「でも、あの出てくるところを叩けばいいって感じでもないよね。そう言えばところどころ罅割れに召喚者が落ちかけてるけど、あれはいいの?」

「落ちてないので大丈夫でしょう。少々の危険は承知の上で調べているでしょうし」


 落ちたらどうなるかは分からないが、扉の形をした罅からモンスターが大挙して出てきているので、碌な事にならないという事だけは確かだ。例によって、死に戻りも出来ない状態になるかも知れない。

 でも司令部の人と、ギリギリ滑り込みで参戦が間に合った観測班の人達が話してる内容を耳を澄ませて聞く限り、一応モンスターを倒すことでこの空間が神々側に寄っていくようだ。

 だからこのまま防衛戦を続けているだけでも、いずれこの空間は完全に神々側のものになって、本筋であるイベントダンジョンに戻れるんだろう。


「とはいえ、出来ればもうちょっと痛打を与えておきたいですね。せっかく明らかに「モンスターの『王』」に近い事が目に見えて明らかな敵が出てきましたし」

「前には出るなよ、お嬢」

「父祖の奇跡もちょっと待って欲しいかな」

「その方法を司令部の人達が推測するまでは大人しくしてます」

「そうじゃない」

「これ、姫さんが動いたり何かする前に、ボクとエルルリージェで殲滅した方が確実じゃないかな」

「仕組みを調べておかないと後で苦労する可能性がありますから、2人もしばらく待機ですよ」


 エルルも納得しかけないで。ギミックはちゃんと解明しとかないと大体後で困るんだから、それが正攻法だったとしてもちょっと待とう。

 まぁでも領域スキルの外を見る限り、「モンスターの『王』」の影響全域デバフは結構キツそうだな。実際私が維持してる領域スキルのコストも、自然回復の内に収めているとはいえそれなりに重い。

 そこで一定数以上の敵を倒す、というある種の耐久戦は、確かにちょっと厳しいかも知れない。つまり、正攻法しか解決法が無い可能性はそこそこ高い。


「モンスター側からの干渉が強いとはいえ、一応分類としてはここも試練の為の空間ですからね。モンスターという形をとる干渉を正面から退けるのが唯一の条件、という可能性もありますから、その時はよろしくお願いします」

「……今の所他には無さそうだが、分かった」

「召喚者は本当に細かいところまで調べるよね」


 サーニャが呆れもしくは感心した風に言っているが、それは大体大神運営のせいなんだよな。ここまで調べるようになったのは。今までのイベントで、ことごとく情報不足で苦労してきたから何事もまずガッツリ調べてから、っていう攻略パターンになったんだし。

 ……そんな会話をしつつ自分の「指針のタブレット」を確認。んー、とりあえずこの近くには何も無い、か。

 まぁ何かあるとしたら少なくとも領域スキルの外だろうし、結構頑張って領域スキルを展開している中心にいたら何も分からないな。大人しく他の人達が何か見つけるか気付くのを待とう。

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