第1591話 53枚目:変化確認

 そんな感じで鈍足ながら探索を進めていた訳だが、リアル20日が過ぎたところで状況が変化した。何の事かというと、前のステージに戻される扉の空間(仮称)へ移動する回数が、600回目以降に変わったのだ。

 これでリアル5日ごとに100回分ずつ範囲が広がる、ストーリー的には「モンスターの『王』」からの干渉が強まるというのが確定した。このまま順調にいかれると、年末には半分以上干渉されている事になる。


「それはたぶんまずいですよねぇ……」

「どう考えても良くはないな」


 で、それを受けての司令部の判断がどういうものだったかというと。


「まぁ、最前線に追いつきやすくなったのは確かですけど」

「というかこれ、足りるのか?」

「足りるんじゃないですか? たぶん」

「お嬢……」


 召喚者プレイヤー側に広く根回しと広報をして、「起点の楔」を最前線だけに設置する事にしたらしい。もちろん今でも最初の方に「起点の楔」を打ち込んでいる召喚者プレイヤーはいるが、それでも半分か3分の1ぐらいの「起点の楔」は最前線に分布しているだろう。

 本当なら「中継点の楔」を設置したかったのだろうが、こっちは数が限られてるからな。ただ「起点の楔」が最前線にあるのなら、扉の空間(仮称)に巻き込まれても、「中継点の楔」があるステージに行けば、そこから「起点の楔」へと転移できるという訳だ。

 これで人数が徐々に削られて追いつくのも難しい、という状態は一応の解決を見た。あと出来るのは、「中継点の楔」を設置するタイミングで出来るだけ大勢でボスモンスターを倒し、扉の空間(仮称)に移動して、最前線の「中継点の楔」があるステージのボスを倒した人数を増やすとかだろう。


「それでもこの広さと複雑さが大変な訳ですが」

「……お嬢にはやるなと言ったが、他の召喚者がやるとは思わなかったな」

「何回目か分からないけど、いいの、これ?」

「あ、サーニャおかえりなさい。まぁ司令部の指示ですし、大丈夫なのでは?」


 そしてステージの攻略だが……まぁうん。流石に探索に時間がかかり過ぎるって事で、司令部の方から大規模攻撃による地形破壊が解禁された。そうなるよな。

 で、実際に地形を破壊してみると、簡単に壊せるところと壊せないところがある事が分かった。それは神の力を使っている攻撃ほど顕著だったので、壊せないところは元々の仕様だった場所だろう。

 まぁ大体の場合は床や端っこの方の壁なので、安全を守るという意味では壊れ無くて助かる場所だ。なので、絶賛破壊活動が進んでいる。


「ねぇ姫さん。あれ、本当にやっていいの?」

「とりあえず今の所、どの神様からもお叱りの声は来てませんね」


 どちらかというと試練(ダンジョン)への干渉に対する攻撃だし、全体で見てもむしろ試練(ダンジョン)を元の形に戻しているに近いんだから、たぶん大丈夫だ。

 特に上の方、空を塞いでいた部分は干渉の割合が多いらしく、天井がかなり高くなっている。ここまではそれなりの割合で空が見えていたから、ここももしかしたら本来はそうだったのかも知れない。


「この調子で一番奥まで辿り着いてしまいたいんですけどね」

「そうだねー。召喚者が1人でも辿り着けばいいんだっけ?」

「神々の想定ではそうなってますね。高確率で門番のような存在が待ち構えているでしょうけど」

「あぁ、それで急いでる訳か」


 ここまでのレイドボスを倒す為に必要だった手間暇を思い出してか、エルルは納得してくれたようだ。そうだよ。今でも厄介なのにほぼ間違いなくレイドボスが待ってるんだから、急ぎたいんだよ。

 ここまでの干渉を考えても、あとは南北の大陸に来てからのレイドボスの事を考えても、絶対ギミック系のボスだからな。ゲテモノピエロが何をやってるか分からないっていう不安要素もあるし、明らかに時間稼ぎに来ている以上は急ぎたいんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る