第1590話 53枚目:攻略鈍化

 後ほどの発表によれば、この妨害ギミックにより「進行ポイント」を使った時に前のステージに戻されるのは、全体の1割から5%だという事が判明したらしい。少ないように見えるが、最低1人はあの空間に飛ばされる、という条件がついている事を考えると、割と厄介な条件だ。

 何故なら700回目以降のステージで「進行ポイント」を使うたびにそれだけの人数が減る。という事は、最前線に追いつくには最低でも1回は「進行ポイント」を通らないと行けない訳だ。

 私と同じように領域スキルを使ったり、クラン単位で挑戦したり、出来るだけ人数を減らさないようにして挑戦しているとはいえ、やっぱり攻略は鈍化している。人数が減ってるからね。


「防御方法も分からないし、面倒な仕掛けですね……」

「そうだねー」


 ちなみにさっきの移動でエルルがいなくなってしまったので、今はサーニャと合流待ちだ。他の場所でも領域スキルを展開している召喚者プレイヤーがいなくなっているので、完全にランダムなんだろう。

 あとは地味に突破条件も厄介なんだよな。1度でも倒したボスモンスターは全部出てくるが、逆に言うと直接戦闘に参加していないボスは出てこないから。そして、通常ステージでボスが復活するのは、倒した人が「進行ポイント」を使って先に進んだ後だ。

 ただまぁ幸いと言うか、誰か1人でも倒した事があるボスモンスターなら出てくるし、その空間で倒しても「倒した」扱いになるらしい。つまり最前線に追いつきやすくなるって事だな。


「思ったよりも厄介だった」

「あ、エルルおかえりなさい」

「結構時間かかったね?」

「2回もあそこに行かされるとは思わなかった」

「……もしかしてエルル、1人で「進行ポイント」を通りました?」

「1人だとダメらしいな」


 通ったらしい。なるほど。たぶん司令部(検証班)の召喚者プレイヤーに頼まれて、だったんだろうけど、お疲れ様だ。

 しかし1人で「進行ポイント」を通るのもダメって事は、やっぱり妨害を防ぐ手段は無いんだな。大人数で一度に「進行ポイント」を使って、通れる人数を最大化するしかないか。

 まぁバックストーリー的に、召喚者プレイヤーが1人でも一番奥に辿り着けばいいんだから、妨害側としては1人も辿り着いてほしくないよな。……もしかすると大勢で移動するほど結果的に大人数が移動できるのって、大神の加護持ちが集まって妨害が通りにくくなってるからか? 実際どうなのかは分からないけど。


「妨害が始まったタイミングが中途半端なのも引っかかりますし、出来るだけ急ぎたいところですが……」

「ダメだぞ」

「やりませんってば」

「何が?」

「見通しが悪いからって地形を焼いたりしませんし」

「姫さん流石にそれはダメだと思うよ」


 やらないって言ってるじゃないか。第一、レイドボス「縛り連ねる外法の綱核」の時は、イベントボーナスで儀式の出力が上がってたからあんな火力になったんだし。私単体でやってもあそこまでの勢いでは燃えないって。

 それに、地形が明らかに探索を阻む為の、とにかく見通しが悪くて時間がかかるものになってたとしても、まだこちらの神々の試練ではある筈だし。どう考えても干渉を受けて変質していると行ったって、影響はしっかりあるだろう。


「地形は焼きませんけど、そろそろ奇跡の1つぐらいは願った方が良いような気がします。神々の力を呼び込んで干渉を押し返すって意味で」

「水攻めもダメだからな?」

「底なしが前提になって来た地形では徒労になるでしょう」

「敵を呼ぶのもダメだからな?」

「やるとしてもそれは通常空間でになりますよ」


 まぁ通常空間でも、あの陽炎のようなものに神々が干渉している以上、他の手段で干渉する事は出来なくなってるかもしれないけど。

 ……未だに1月イベントが何か分かってないからなー。レイドボスがいるのはほぼ確定だろうし、今までの事を考えると、12月イベントの状況で1月イベントの内容が変わる、実質の前後編っていう可能性も高い。

 その辺、司令部の判断待ちな部分もあるとはいえ……どうしたもんかな。

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