第1589話 53枚目:ギミック判明

 もちろん、行方不明者が出たって時点で「指針のタブレット」は確認しているし、ステージを探索している召喚者プレイヤーは各自「導きのタブレット」か「指針のタブレット」を確認しながら進んでいる。

 ついでに言えば、701回目のステージに来るときの「進行ポイント」には「導きのタブレット」を使い、何か変化が無いか調べてから来ている(司令部発表)。

 にもかかわらず、手掛かりなし。というのが現状だから、召喚者プレイヤー側は困っている訳だ。“ナヴィ”さん達の加護付きアイテムがあってこれって、かなり厳しいぞ。


「上にも下にも森は続いているみたいですから、その辺の木を迂闊に切り倒すと、かなりの範囲が崩れて大変な事になりますし。本当に厄介な地形ですね」

「だからってまとめて焼き払おうとするなよ?」

「しませんってば」


 どうやら最前線ではこのステージのボスモンスターを発見・戦闘に突入したらしいが、私とエルルは待機だ。まぁ最前線だけあってベテラン召喚者プレイヤーが揃っているし、モンスターよりも地形の方が厄介だから、戦力的にはどうにでもなるだろう。

 行方不明者の方は全く進捗無し。というか、情報が来ない。リアル経由での情報共有にはリスクがあると言ったって、そろそろ何かあってもいい筈なんだけどな?

 ここまで何もないとなると、司令部が情報を封鎖してるっていうより、本気で情報が来てないって事になるだろう。行方不明になっている中には司令部の人も混ざっていたから、報告しない、という状況は限られる。


「つまり、脱出あるいは合流の目途が早々に立っている、かつ、その方法あるいは手順がとてもややこしい……ぐらいしか、あえて連絡を取らないでいるって理由は思いつかないんですよね」

「……まぁ、少なくとも試練の形はしてるんだし、ここまでの鍵が全部モンスターを倒す事だからな。同じ条件なら、アレクサーニャがいるんなら越えられない訳がないだろ」

「少々倒す順番や倒し方に条件があったとしても、司令部の人がいるならすぐ割り出せるでしょうし。同時撃破が必要でも、召喚者プレイヤーの中でも実力者が一緒ですからね」


 それに今のサーニャなら、周りを見て撃破のタイミングを合わせるぐらいは余裕で出来るだろう。だから時間がかかっているように思えても、手順的には最短を突っ走っている可能性はある。

 というかサーニャが最短を突っ走り過ぎてギミックが確認できず、司令部の人を含めた召喚者プレイヤー達がサーニャに検証をお願いしてるっていう可能性もあるな。冷静に考えたら。

 随分召喚者プレイヤーとも打ち解けてたし、検証の必要性もだいぶ分かってくれてたみたいだから、例えば次に私が選ばれた時に少しでも脱出までの時間を早くする為、とかいう理由があったら、すんなり協力するだろうし。


「あっ、姫さんいた! エルルリージェも!」

「何があった?」

「こ、今回は迷子になったんじゃないからね!」


 とか思っていると、このステージに誰かが来た時の効果音が聞こえて、その直後にサーニャの声が聞こえた。いたとは。そして誰も迷子とは言ってない。


「んー、何か扉がたくさんある場所に出て、その扉の前に今まで出てきた鍵のモンスターがいたんだよ。召喚者と一緒に色々やったら、その場所で鍵のモンスターを倒すと、その場所に移動できるようになるみたいだったね」

「今まで出てきた……って事は、700体か」

「ううん。倍は居たんじゃないかな? と言っても、全部倒すのにはそんなにかかんなかったんだけど。ただしばらく待ってると復活したから、全滅とは言えないのがちょっと悔しい」

「サーニャ。たぶんそれ復活しないと詰む人が出ます」

「そうなの?」


 そうこうしている間に、司令部から発表があったな。内容はサーニャの報告と一緒だが、ボスモンスターについては、倒したパーティだけが通れるようになる、という情報が追加されていた。

 そしてボスモンスターと扉のセットは、その扉だらけの空間に引っ張り込まれた召喚者プレイヤーとその仲間が、一度でも倒したボスモンスターが全部出てくるようだ。ただし扉の前から動く事は無く、1体と戦っている間に他のボスモンスターが反応することも無いらしい。


「確かに多少は厄介ですが、これなら何とかなりますね」

「良くないよ? 姫さんが姫さんだからっていうのもあるけど、一緒に来てた召喚者は割とすぐ具合が悪くなってたからね?」

「なるほど。状態異常の積み込みがあるんですね」


 恐らくは「モンスターの『王』」由来の。

 まぁ「進行ポイント」はこちらの神々が設置してるんだから、自分で選べるとはいえボス戦をした上で前のステージに戻されるっていうのは、どう考えても妨害だよなぁ。

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